クロウサギ妊娠個体輪禍

ロードキルに遭ったアマミノクロウサギの妊娠個体(環境省提供写真)

交通事故遭い死亡
環境省 「ゆとりある運転心がけて」

 世界自然遺産登録の再推薦も間近に迫る中、奄美大島で国の特別天然記念物アマミノクロウサギの妊娠個体が交通事故に遭って死亡していたことが判明した。環境省奄美野生生物保護センターによると、回収され保存されていた個体を今月8日に解剖したところ、母体の腹部に胎仔を確認。妊娠個体のロードキル(輪禍被害)は、2015年以来で2例目になる。同センターは、「林道ではいろいろな生きものが活動している。夜間はゆとりある運転をしてもらいたい」と注意喚起している。

 死亡個体は昨年11月23日午後9時8分に、奄美市住用町神屋の林道神屋ダム線に入り2㌔ほど進んだ地点で付近を通行した住民が発見しセンターに連絡。センター職員が現地に赴き、死亡個体を回収していた。

 被害に遭ったクロウサギ(母)は、体重2・43㌔、体長51・6㌢で、顎下と背中、左内ももに内出血があったため交通事故死と判断。胎仔は体重100・1㌘、体長16・3㌢だったことから、センターでは「胎仔はいつ生まれてもおかしくない大きさだったのではないか」と考えている。

 センターが収集分析した死体情報によると、ロードキルは09年の27件を上回り、17年が奄美大島26件と徳之島8件の計34件と過去最多。18年も奄美大島20件と、発見数63件の3分の1近くを占める。

 センターはマングース防除事業などにより、クロウサギの生息数や生息範囲が回復してきてロードキルの発生も増加傾向にあると推察。また近年の入込客増で、交通量が増えた可能性も視野に入れている。

 センターの早瀬穂奈実自然保護官は、「11~1月の出産期の事故死で非常に残念。夜の林道などでは生きものが活動していることに配慮して、運転に十分注意をしてもらいたい」と話した。