「縁起でもない話をしよう」講演会

医師・平野信一郎さんの医療現場からの体験談をもとにグループ討議も=19日、徳之島町

最期まで自分らしく
徳之島診療所・平野医師 「死否定してはいけない」

 【徳之島】「縁起でもない話をしよう会」と題した医療講演会(奄美医療生協徳之島診療所主催)が19日、徳之島町亀津の東区公民館であった。同診療所副所長の医師・平野信一郎さん(36)が終末期の患者やその家族らと向き合った自らの経験を紹介。「人生は自分らしい選択の積み重ね。最期まで自分らしく生きるため、元気なうちから大切な人と縁起でもない話を」と呼び掛けた。

 平野さんは、鹿児島生協病院(鹿児島市)に勤務していた昨年7月、同市谷山の「妙行寺」で、医師や弁護士、住職など「人生の最期」に関わる有志らと医療・福祉と住民を結ぶ「縁起でもない話をしよう会」シリーズをスタート。反響を呼びこれまで5回開催。徳之島赴任(短期)を機に今回初開催。住民や医療・福祉関係者ら約40人が参加した。

 平野さんは患者の死との直面、救命できながらも悪化した認知症や食事制限、寝た切りとなるケースへの無力感、葛藤も吐露。そうした中で、元気なうちに意思疎通を図っての自宅治療の末、妻に「今までありがとう」の言葉を残して旅立ったがん患者(80代男性)の感動のケースも紹介した。

 「死を否定してはいけない。人は100%亡くなる生き物。死を避けることはできない」。だが、「死後も大切な人の人生を支えることができる。死に囚(とら)われず、死後も続くものにも目を向ける。日常から大切な人と良好なコミュニケーションを取ることが大切」。バトンを受け取る家族への想いも込めた。

 延命治療の採否を含め「大切な事と分かっているが『縁起でもないから』と避けてしまっている。死期が近づくほど、本人や家族の苦痛を伴い避けがち」。終末期には患者の7割が(病脳期などで)意思決定が困難になるとされることから、終末期の生活やケアに本人の意思が反映されない可能性も指摘する。

 そして、本人の望む生き方、自分らしい人生の選択の積み重ね、最期まで自分らしく生きるため。元気なうちから夫婦や子ら家族、近くにいない場合は近所民、医療・介護者などとも、「元気なうちから縁起でもない話をしよう」と強調した。

 このあと「かかりつけ医に余命1年と言われた…」と想定してグループ討議もあった。