「関心と共感の社会大切」

環境文化の伝承に向け、「聞き書き」の意義を講話した吉野さん

 

吉野さん、「聞き書き」指導
共存の森ネット

 
 地域の環境文化を次世代に引き継ぐ取り組みを考えてもらおうと、県は22日、奄美市名瀬の県立奄美図書館研修室で「『聞き書き』指導者養成講習会」を開いた。高校生が自然の中で生きる名人の姿を伝える「聞き書き甲子園」を開催しているNPO法人「共存の森ネットワーク」=東京都=事務局長の吉野奈保子さんが対面式取材のコツや実践事例を講演。人が自然や人と向き合いながら、相互的な関心と共感を持ち合える社会の大切さを語った。

 2017年3月の奄美群島国立公園化について、環境省は人間と自然の関わりと調和した「環境文化型」を提唱。それを踏まえ県は、長年で培われてきた自然と共生する知恵や技術を“環境文化”と定義。奄美・沖縄地域の世界自然遺産登録に向け、県民の環境意識の醸成が目的だ。

 講習会は次世代への継承・伝承するため有効な「聞き書き」を推進しようと、今回を含め県内3カ所で開催。この日は県立大島高校の新聞部員ほか、自治体、学校関係者など約60人が参加した。

 「聞き書き甲子園」はこれまで17回開かれ、毎年全国から100人が参加。対面した高校生が名人の言葉を書き写し、どう感じたか発表するイベントだ。

 吉野さんは、▽必ず対面で話を聞く▽方言や言い回しはそのまま▽言葉のキャッチボール―などの取材ポイントを説明。「いましか聞けない、足を運んだ取材者にしか聞けない話。それを文字にして伝える意義は大きい」と強調した。

 また取材を通じ、自分自身に反映させていく狙いにも触れ、「取材対象に無関心では本質が見えない。関心と共感し合える社会づくりを考えてほしい」と吉野さん。参加者はその言葉に真剣な表情で聞き入った。

 羽井佐幸宏県自然保護課長は県の環境文化の取り組みを講話。「そこにしかない地域の魅力や資源を『聞き書き』で残し、広く伝えられたら」と述べ、「聞き書き」での伝承活動を提言した。

 同校2年・若師すずかさんは「奄美の環境文化とその価値を、私たちの目線でどう伝えられるか考えたい」、同・森悠里さんは「新聞部として記事のまとめ方、紙面づくりにつながる取材姿勢が参考になった」と話した。