奄美考古学会与論大会

奄美考古学会与論大会

4研究者が研究発表、講演を行った奄美考古学会与論大会(提供写真)

与論独自の土器群を報告
城跡、調査・研究の課題も

 奄美考古学会(会長・高宮広土鹿児島大学島嶼=しょ=研究センター教授)は19日、与論町の中央公民館で第10回奄美考古学会与論大会を開いた。4研究者が研究報告や講演を実施。地元住民も多く参加。沖縄国際大学南島文化研究所の呉屋義勝特別研究員は、調査で与論島独自の土器群が発見されたことなどを明らかにした。

 この日は▽「与論の考古学調査に向けて!~地域の方々の意向を踏まえた学際的な共同調査のために~」(呉屋特別研究員)▽「与論城=グスク=跡のこれまでとこれから」(与論町教育委員会・南勇輔さん)▽「伊仙町大セノ嶺遺跡の調査速報」(伊仙町教育委員会・新里亮人さん)―の研究発表3題と、県立埋蔵文化財センターの堂込秀人センター長による講演「南島の考古学調査の歩みと展望」を実施した。

 呉屋特別研究員は、2016年から、与論郷土研究会(麓才良会長)と共同で実施した遺跡分布調査と結果を報告。同島で遺跡が78カ所発見されたこと等を解説。また、発見された与論独自の土器群を、「サアクラ土器」として提唱したいとし、「日本本土の鎌倉・室町時代に並行する中世に、奄美では多様な土器文化が発達し、与論にも独自の文化があった」と話した。

 南さんは与論城跡の調査について発表。遺構の配置状況や遺物の散布状況、出土した遺物について説明した。今後の課題として、①発掘調査を基にした遺構・遺物の分析②周辺の島に造られたグスクとの比較③島内の同時期の遺跡との比較④伝承・古文書の分析―等を挙げ、「与論島、与論城跡の位置づけを明らかにしていくためにも、今後も調査・研究を進めたい」と語った。

 大会翌日の20日には与論町城跡の遺跡見学会を実施。南さんが遺跡を案内したほか、麓会長が城久集落の成り立ちや、民俗学的な知見からの案内を行った。

 同学会大会は年1回、県内で開催しているもので、同島では今回が初めての開催。国内各地から研究者が訪れたほか、地元住民も多く参加。高宮会長は「想定を超える参加者数だった。ほとんどの人が最後まで聞き、質疑応答に手を挙げる人の姿もあった。興味を提供する場となった」と話した。