絶滅危惧種誤って伐採

誤って開花期に伐採された絶滅危惧種オキナワチドリの花

「オキナワチドリ」
龍郷町内の県道 発注側の指導徹底求める声

 環境省の絶滅危惧種に登録されている「オキナワチドリ」が、龍郷町内の県道で伐採作業により誤って刈られる被害に遭ったことがわかった。関係者からは事態を重視し、事業を発注する県大島支庁建設課の指導徹底を求める声などが上がった。同課は再発防止に向け専門家を招いた勉強会を充実させ、伐採の際に専門家の立ち会いを求めるなどの指導を行う考えだ。

 奄美の植物に詳しい山下弘さんの著書によると、オキナワチドリはラン科の植物で九州南部から沖縄島に分布。海岸沿いの日当たりのよい草地や岩場に自生するが海岸開発などで減少し、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(鹿児島県は準絶滅危惧種)に登録されている。

 花期は2~4月で、草丈10㌢ほどの茎に長さ8~10㍉の淡紅紫色の花を複数咲かせる。地下に球根があり葉が出るのは12月に入ってからで、5~12月はオキナワチドリを地上部で見ることはできない。

 被害を受けた龍郷町内の自生地は以前、同課が発注した道路災害防除のための防護柵工事が実施された一帯。防護柵の設置箇所にあった同種の球根は山下さんの助言を受け、受注業者が掘削した表土をふるいにかけ取り出し、近くの集落内に移植して保護を図っていた。

 今回の伐採を行ったのは、同課から県道の管理委託を受けた別の業者。同課道路維持係によると、今月21日までに受注業者に事実確認を行い同種の誤伐採について口頭注意を行ったという。

 現地は防護柵の内側や周囲で、開花期を迎え可憐な花が咲き始めた状況。山側の斜面など一部は難を逃れたが、伐採箇所には刈り取られた花も落ちているのが確認された。

 今回の誤伐採について同課の藤田正之課長は、「開花期の伐採で時期が適切でなく、勉強会も実施していたが、業者への啓発や指導が足りず連携が不十分だった」と説明。また、「奄美・沖縄」の世界自然遺産登録の再推薦が行われた後の時期で、水を差しかねないことから「申し訳ない。再発防止を徹底したい」と話した。

 同課は再発防止策として、▽専門家による希少種の勉強会の充実▽伐採作業前の専門家立ち会い―などを講じる。藤田課長は「専門家にアドバイスを受けるよう指導を行い希少植物の自生する場所や、伐採の適切な時期などの周知徹底を図りたい」と語った。

 山下さんは同課の勉強会に年2回講師として参加し、工事などの立ち会いも何度か求められることがあるという。「今回は伐採時期がまずかった。ただ地下に球根があるので全滅は免れた」「5~11月頃が、伐採に適切でないか。事前に知らせてもらえれば、刈る時期などいろいろアドバイスできる」。

 自然写真家の常田守さんは「オキナワチドリはよく刈られてしまう植物。またかという印象だ。事業を発注する側が、しっかり把握して業者を指導すべき」「奄美は希少種の種類が多い多様性で、世界自然遺産に推薦された。一方で盗掘・盗採もなくならない。これで本気で守る気はあるのか」と憤った。