国内希少種カエルなど28匹無断捕獲容疑で逮捕

日本で最も美しいカエルと言われるアマミイシカワガエル、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類とされている


環境省のレッドリスト絶滅危惧ⅠB類のオットンガエル(奄美群島国立公園管理事務所提供)

都内の男2人、奄美空港で発覚
世界自然遺産価値 損ねる行為、監視行為強化へ

 警視庁・鹿児島県警合同捜査本部(警視庁生活環境課・万世橋署、鹿児島県警本部生活環境課・奄美署・瀬戸内署)は7日までに、奄美大島で国内希少種のカエルなどを無断で捕獲したとして都内の男2人を逮捕した。世界自然遺産登録を目指す奄美で自然の価値を損ねる行為に関係者は憤りを見せ、再発防止にパトロール強化する意向を示した。

 種の保存法違反などで警視庁と県警に逮捕されたのは、東京都中野区に住むペットショップ店長の天野利光容疑者(50)と、生物に関する著作がある練馬区のフリーライター園部友康容疑者(42)。県警生活環境課によると、容疑者2人は共謀して環境大臣や県教育委員会などの許可を得ず希少種の違法な採取などをしたとされている。

 調べによると、2人は昨年7月17~18日にかけて宇検村の村道湯湾大棚線の路上で、国内希少野生動植物種で県指定天然記念物のアマミイシカワガエル2匹とオットンガエル2匹を捕獲。また近くの場所で、県指定天然記念物で宇検村指定希少野生動植物種のアマミハナサキガエル10匹を捕獲。このほか同19日に奄美空港で国の天然記念物であるムラサキオカヤドカリ5匹や特定動物のトカラハブ9匹を保管して、文化財保護法などに違反した疑いを持たれている。

 県警生活環境課によると、2人が捕獲したカエルなどをキャリーバックに詰め手荷物で機内持ち込みしようとしたところ、X線検査では手荷物検査を通過できず28匹の生体を貨物扱いで島外に持ち出しを図り、不審に感じた奄美空港の貨物担当職員が奄美署に通報して事件が発覚した。

 警察の調べに対し、2人は希少種を許可なく獲った容疑を認めているという。「飼育目的だった」と話しているが、営利目的などの可能性もあることから警察は今後の捜査で動機の解明を目指すとしている。

 これまで象牙など生体でない物品の摘発はあるが、2003年以降、動物の生体の持ち出しが摘発されるのは県内初になるという。

 環境省は奄美で盗掘や盗採など違法採取が絶えないことから先月、鹿児島市で希少な動植物の密猟・密輸対策連絡会議(事務局・同省沖縄奄美自然環境事務所)を立ち上げ。国や県、民間団体などで連携し、違法採取対策や啓発活動を行うことを協議していた。

 同省奄美群島国立公園管理事務所(大和村)の千葉康人世界自然遺産調整専門官は、世界自然遺産登録に向け一体となって取り組んでいる所に水を差す行動と憤る。「違法採取は奄美の自然の価値そのものを損ねる行為。許されない行為なので関係者で厳しい対応をとっていきたい」「奄美大島で違法行為が摘発されたので、今後も空港の関係者とも連携して監視の目を強化したい」などと語った。

 なお新年度から同事務所などが行うパトロール活動については、回数や期間などを増加し監視体制が強化されているという。