県議選振り返る

群島各地で遊説し、有権者に県政の課題や取り組みを訴える候補者(大島郡区でトップ当選した禧久氏陣営)

無投票や候補者減で選挙機運高まらず
選択肢狭まり投票率低下
市民と県政「つなげる橋渡し役に」

 県議選が終了し、奄美の新県議4人の顔ぶれが決まった。奄美市区(定数2)は自民現職2人が無投票で当選、3人が立候補した大島郡区(同2人)はいずれも自民の現職と新人が当選を決めた。選挙期間中には、新元号発表の祝賀ムードもあり、県議選への有権者の関心は高まらなかった。県全体でも候補者数が過去最少となるなど、立候補者の減少で無投票当選や低競争率が相次ぐ状況も選挙の機運が高まらなかった要因の一つとなった。

【奄美市区】

 無投票の奄美市区は、平成最後の選挙で、市民の声を直接県政に届ける議員を選ぶ権利行使の機会が奪われる形となった。

 元市議で、名瀬港運協会事務局長の金井顕三郎さん(81)は「市政に比べ県政は市民に見えにくい面もあるが、奄振事業など国政と直結する重要な事業も多い。市民は選挙を通し、県議の考えに耳を傾け、議会や県政について知ることができる。しかし、無投票ではその機会はない」と話す。

 同協会などが管理する同市名瀬塩浜町の名瀬港本港区では現在、岸壁の改良工事が進められており、県では今後、旅客ターミナルビル新築も計画されている。だが、岸壁近くの海底地質の問題などから事業に遅れが出ており、ターミナルビルの計画については、ほとんど協議が進んでいない状況だという。

 金井さんは「当選した新県議の公約には本港区の整備計画についての具体策はない。LCCの就航など航空路線の利便性が図られる一方で、島民生活の核となる離島航路の港湾整備については、関心が薄すぎる。選挙戦にならないと、地域の課題も表に出ず、市民の声も反映されにくい」と不満を口にした。

 一方、市民の代表である市議会の師玉敏代議長は「無投票は、市民が現職の働きぶりを認めた結果と受け止めることもできる。県政に声を届ける機会は、選挙だけではない。新県議には県政報告会など、さまざまな場面で県政の現状などについて丁寧に説明をしてもらいたい」と話し、「市民の代表である市議会としても、市民と県政をつなげる橋渡し役となれるよう努めたい」と話した。

【大島郡区】

 前回に続き、2回連続で選挙戦となった大島郡区だが、投票率は60・30%で、これまで最低だった2015年(投票率67・58%)をさらに下回り、2回連続で過去最低を更新した。

 立候補した3人が徳之島を地盤としていることもあり、同島以外での盛り上がりに欠けたことが、市町村別の投票率に表れている。喜界町(同53・69%)、知名町(同54・70%)、和泊町(同56・72%)、与論町(58・94%)などで60%台を割り込んだ。なかでも、前回まで地元候補者がいた瀬戸内町(同56・58%)では、前回投票率から16・94ポイントも下落、選挙区内最大の下げ幅となった。

 選挙期間中も同町は、これまでになく静かだった。同町古仁屋の女性(70)は「以前は地元の県議がいたが、今回は違う。徳之島に固まってしまったから」と少し冷めた表情で話した。それでも期日前投票に来た同町古仁屋の男性(85)は、「西古見のクルーズ船問題に取り組んでくれる人を選んだ。選挙期間だけでなく、普段から選挙区内を回り、活動してほしい」と注文した。

 一方で、地元から2人の県議を送り出すこととなった徳之島では、県政での活躍に期待する声が上がった。観光振興策が奄美大島に偏っていると感じているという徳之島町の女性(60)は「観光の盛り上がりを群島全域に広げてほしい」と期待、天城町の男性(57)は「2人とも徳之島が地盤なので期待している。オール奄美で頑張っていることを県政でも訴えてほしい」と喜んだ。

 こうした有権者の声に新県議の一人は、徳之島へのLCC誘致実現に取り組む姿勢を示し、「群島民全体への責任を感じながら、県政に有権者の声を届けたい」と決意、令和へとタスキをつなぐ平成最後の選挙で選ばれた責務を胸に刻んだ。

(県議選取材班)