~歌姫~城南海物語 08=初対面の風景編

鹿児島でのイベント共演で満面の笑みの西田あいと城南海=西田あい(株式会社GPR音楽事業本部歌謡セクション)提供

証言者が紡ぐ奇跡の10年
「日本のサラ・ブライトマンだ!」「独特のオーラが心地よい」「永遠に聴いていたい」

 「若くてとっても声が奇麗な子だなぁと思って、島からまた音楽仲間が出てきてとても刺激になりました」。島の先輩で城南海が「孝介兄ちゃん」と呼ぶ、中孝介である。川村結花によるデビュー曲「アイツムギ」で共感を得た南海は、同時に多くの業界の先輩たちと出会うことになる。彼女と対面した、それぞれの風景をのぞいてみた。

 南海が月に一度パーソナリティーを務めるレインボータウンFMの編成局長・木下和則は、2013年の12月。翌年1月から始まるラジオの新番組の打ち合わせが初対面で「番組名をどうしようか。城さんは英語の『R』の発音にはまっていて、『Rの発音ができる名前がいい』みたいなことを言って、変わった子だな」と思った。当時、ラジオ仲間と、誰が世界で一番歌唱力があるかと話題にした際に名前が挙がっていたのが、サラ・ブライトマンだった。そんな木下が南海の声を聞いたとたんに、衝撃が体を突き抜ける。「日本にサラはいないなぁ、なんて思っていた時に耳にしたのが、まだ無名だった城さんが歌う『童神』。日本にもサラがいる。彼女のラジオ番組を作りたい」と強く願うのだった。のちに親友として深く信頼を寄せ合う、西田あいは、BSテレ東「徳光和夫の名曲にっぽん」の収録が初対面。「小さい、目が奇麗、吸い込まれそう」が第一印象で「ずっと会いたかった~という感じで会話が始まった」。共通の知り合いの多さに話が盛り上がった。「島時間が抜けていないのか(笑い)とてもおっとりしているんだけど、独特の雰囲気(オーラ)があり、周りの人をフワッと包み込むような感じがとても心地よかった。合っている間トークテーマは大半が恋の話、とても教えられませんが、ガールズトークはいつも大盛り上がり」だとか。聞いてみたいものだが、それは果たされることはない。二人は、「互いの音楽、自分の活動を通じて故郷を盛り上げたい」と常々語り合う。

 彼女たちが青春に情熱を傾けた、鹿児島・奄美などを舞台に昨年放映された大河ドラマ「西郷どん」の音楽を担当した作曲家・富貴晴美は、「美人でよく笑うかわいい方」の印象を抱いた。ところが、仕事を共にして一変する。ジャズピアノの巨匠・山下洋輔と初顔合わせした南海は、そのままセッションへ。「物おじせず、1度目のセッションから素晴らしいハーモニーを響かせた、南海どんに私は感動しました」。ただのかわいい歌手ではない。まだまだ余裕のある底知れぬ可能性を感じた富貴は、「永遠に聴いていたい」とまで心が震え、目が潤んできたのを覚えている。NHKプロデューサーだった藤原敬久は、「スタッフの間でも、聞いているだけでドラマの場面が浮かんできて、涙が出そうになると話題になりました」。流した涙を超えて、感動は広がっていった。
 (高田賢一)=敬称略・毎週末掲載