奄美の松くい虫被害のほとんどを占める徳之島も被害量は減少傾向にある(伊仙町義名山で撮影)
県大島支庁林務水産課は、2018年度松くい虫被害状況をまとめた。奄美全体の被害量は前年度比36・8%減と約4割減少の1万2900立方㍍となった。ほとんどは徳之島の被害だが、徳之島も減少傾向にある。被害回復で奄美の森は樹種転化により、スダジイ(イタジイ)などの広葉樹林化が進んでいる。
18年度被害量(3月末現在)を島別にみると、奄美大島は6立方㍍(前年度比0・6%)となり、前年度の1040立方㍍から大幅に減少。市町村別では瀬戸内町(4立方㍍)と龍郷町(2立方㍍)のみで、最近は奄美大島北部への被害拡大が指摘されていたが、奄美市笠利地区の被害はゼロに。また、加計呂麻島は前年度の5立方㍍から2立方㍍となった。
被害が著しかった徳之島も少なくなりつつある。3町計1万2891立方㍍で、前年度の1万9316立方㍍から33・26%減少した。3町で最も被害量が多いのは徳之島町(1万449立方㍍)だが、前年度比24・2%減少している。
奄美での松くい虫対策は、枯れた松を伐倒してビニールに包み、燻蒸=くんじょう=する伐倒駆除が主流。希少野生動植物が多く生息することから、本土で効果のあった薬剤の空中散布は実施されていない。県、市町村は18年度に事業費1億2900万円を投入し、伐倒駆除536立方㍍、枯損木対策(マツの除去)2440立方㍍、薬剤樹幹注入437本などの対策を進めた。
同年度の被害量が前年度の6割(63・2%)にまで減少したことについて林務水産課は「駆除効果により被害は減少しており、奄美全体でみると収束しつつある」と指摘する。特に被害がほとんどない状態にまで回復した奄美大島の森では、リュウキュウマツが減少し、伐倒後、下からスダジイが生え成長するなどして広葉樹の占める割合が増す樹種転化が進行している。
なお徳之島では被害により枯れたマツが存在することから、同課では強風をもたらす台風などの際に倒木する危険性があるとして、周辺を通行するときは安全面への注意を呼び掛けている。
松枯れは体長約1㌢の線虫・マツノザイセンチュウがマツの樹木本体に侵入し引き起こす現象。マツノマダラカミキリが線虫を運び、被害は拡大する。感染によりマツは樹勢が衰え、葉は赤茶色に変色してやがて枯れる。奄美では1990年代に瀬戸内町加計呂麻島で松枯れが確認され、以降、被害が増え他の地域まで拡大。10年度には被害量が8万8076立方㍍まで増加したが、その後は駆除対策で年々減少している。