鹿大・龍郷町で島めぐり講演会

島めぐり講演会で講演したと山本教授

在来果樹 「先人からの文化」
機能性成分の活用を提言

鹿児島大学薩南諸島の生物多様性とその保全に関する教育研究拠点整備プロジェクト主催の奄美群島島めぐり講演会が25日、龍郷町の生涯学習センターりゅうがく館多目的室で行われた。4回目となる講演会では同大の研究者が、リュウキュウアユの生態や奄美の果樹などに関して講演した。講師は参加者にリュウキュウアユの保全や、在来果樹の機能性成分の活用などを提言した。

同プロジェクトは、奄美群島の生物多様性や自然と人の関わりを研究し教育活動に生かす目的。今年度は研究成果を地域に還元するため、各島を回る講演会を開始している。

開会行事に続き、同大水産学部の久米元准教授が「絶滅危惧種リュウキュウアユの生態について」を講演。スライド資料や動画で、アユの生活史や、個体数モニタリング調査結果、主要な河川の個体群などを解説した。

リュウキュウアユは環境省や鹿児島県の絶滅危惧種に指定されていて、野生の個体群は奄美大島のみに分布。沖縄では絶滅してしまい、奄美大島から移植した個体群がダム湖に定着しているという。

個体数調査は奄美大島でアユの産卵が毎年確認される川内川(奄美市住用町)、住用川(同)、役勝川(同)、河内川(宇検村)の主要な4河川で実施。久米准教授は「30年以上に渡り個体数調査している。個体数は年や河川で大きなばらつきがあり、赤土流入や外来種などの脅威がある」と語った。

「アユの保全には地元住民の理解が欠かせない。これからも奄美の海や川の多様な生物相が保たれていくことを望む」とまとめた。

質疑と休憩後に、同大農学部の山本雅史教授が「奄美群島の果樹遺伝資源とその利用」と題して講演。スライド資料や配布資料で、奄美群島の主要果樹や在来かんきつ類、有効な機能性成分とその利用などを説明した。

かんきつ類の皮に多く含まれるポリメトキシフラボノイド(ノビレチン)の抗がん作用や、血糖値上昇抑制作用などに着目し、「加工品としての利用を考える必要がある。台風や日照時間の短さ、病虫害などの課題あるが、県本土並みの収量を目指して生産技術を上げるべき。在来果樹を先人から伝えられてきた文化としてもとらえ、奄美にしかないという点を意識して島の魅力を発信してほしい」と語った。