瀬戸内町長選・町政の課題

無投票当選を知り、支持者らと握手を交わす鎌田氏

「信任得たわけではない」
反対広がる寄港地誘致 町民の声聞き各施策を

 任期満了に伴う瀬戸内町長選は4日、告示され、現職の鎌田愛人氏(55)のみが立候補を届け出し、町制施行以来初の無投票での再選が決定した。初当選時から一貫し、「チームせとうち」を掲げ、幅広く具体的な公約を掲げている。無投票での当選が決まった後、「町政に課題や批判があることは事実。多くの町民の信任を得たということではないと自覚している。結果を真摯に受け止め、町民とともに町の振興発展に向け頑張りたい」と鎌田氏。人口減、離島の利便性向上、クルーズ船寄港地誘致問題。課題も多く、2期目の町政運営に注目が集まる。

◆1期目実績

 2015年の初当選以来、「瀬戸内創生マニフェスト」と銘打ち多岐にわたる政策を推し進めてきた。鎌田氏によると、その達成率は74%に上る。実際、「チームせとうち我が事・丸ごと支え愛事業」による医療福祉の充実、シルバー人材センターの設立による雇用創出を実現。財政健全化を図り、起債残高を就任前の14年度の111億9千万円から18年度は94億4千万円まで削減するなどした。

 雇用創出も鎌田氏が力を入れた政策の一つだ。加計呂麻島では「奄美せとうち地域公社」も今年2月に設立され今後、黒糖やきび酢生産に踏み出す予定。起業支援についても店舗・駐車場の賃借料や設備投資への助成等を実施。16年度に始まった同助成制度を活用し、3企業が立ち上がった。

◆止まらぬ人口減

 瀬戸内町の現在の人口は8941人(19年4月現在)。陸上自衛隊瀬戸内分屯地の開設により、18年の8883人より増えたが、合併当時の1955年の半分以下にまで落ち込んでいる。

 町は人口対策をしなかった場合の2060年の町人口を3911人と試算し対策に打ち込むが、起業支援と両輪で進める企業誘致の実績は開始3年で0件。「最終的なマッチングで『働く人がいない』ことがネックとなる」と担当課。こうした中、鎌田氏は「住環境の整備が大切」と語る。

 また、町内に抱える離島・加計呂麻島にも企業、移住者を呼び込もうと、今年度は同島への光海底ケーブルの敷設を予定。行政サービスの均質化による利便性向上のために、同島への役場支所の建設、請・与路両島の診療所に役場窓口機能を持たせることなども計画し、離島の利便性向上に向け取り組んでいる。

 一方、古仁屋と加計呂麻島を結ぶフェリーかけろまの欠航便数は18年1年間で272便に上る。現在、欠航対策などを協議会で検討しているが、利便性向上に向けての大きな課題に早急な対策が求められる。

◆クルーズ船寄港地誘致

 特に人口減少が著しいのが奄美大島側の西方地区。18年人口は1955年の3778人から約9割減の410人。人口減に歯止めをかけようと、町は今年度に地区内の旧校利活用などを計画している。

 検討協議会で話し合いが進められる西古見へのクルーズ船寄港地誘致についても、町担当課は「西方地区振興策の一つ」とする。しかし、町民に説明のないまま計画を進めた町に対し疑念は膨らみ、反対団体関係者は「協議会で公募によりプレゼンをしたのが1船社のみだったのを見ると、出来レースにしか思えない」とこぼす。

 5月までに加計呂麻島からは住民の6割に上る数の反対署名が提出されるなど今もなお反対の声も広がるが、鎌田氏は同問題について、「検討協議会の議論を踏まえ判断する」とのみ。同関係者は「不信感がぬぐえない。町民みんなで反対する必要がある」と主張する。

◆疑念ない施策を

 町制施行初の無投票となった瀬戸内町長選。鎌田氏は批判の存在を認め、無投票当選という結果に甘んじる姿勢を見せない。クルーズ船誘致問題が示した改善点を生かし、町民の声を聞きつつ、町民が疑念を抱くことのない状態から各施策を始めることが求められる。鎌田氏の「情報発信に力を入れ、自分自身が町民と語る機会を増やしたい」との言葉を信じ、瀬戸内町が「住み続けたいまち」になることを望みたい。

    (西田 元気)