新時代あまみ 山村留学を生かす(上)

新時代あまみ 山村留学を生かす(上)

19年度校区活性化対策委員会の会長に選ばれた吉久さん

親子転入で地域活性化
宇検村・阿室校区学校存続を実現

 「自分からやりたいという人に出てもらいたかった。受けたからには次にバトンタッチできるよう一年間頑張っていきたい」――。今年5月の総会で宇検村の阿室校区活性化対策委員会の新会長になった吉久征男さんの抱負の言葉だ。同委員会は親子山村留学の受け入れなど地域の一体的な活動でI・Uターン者を増やす取り組みなどが評価され、2017年度農林水産祭むらづくり部門の天皇杯受賞の栄誉に輝いた。09年に発足し11年目を迎える同委員会だが、吉久会長は「次の10年間に向けアンケートなどで校区内の意見を聞いて活動に反映させて継続していく」という。

 □推進体制

 委員会は阿室小中学校の休校を防ぐために、校区内に児童生徒の家族で移住してもらう親子山村留学制度の仕組みをつくり、10年度から受け入れを開始。活動当初は校区内の全世帯から賛助会費として1世帯月額100円を協力してもらっていたが、12年度からは委員会に対し村が補助金(当初5年間は年30万円で、現在20万円)を支出。転入した児童・生徒には村少子化対策特別助成金1人あたり月3万円が支給される。

 親子山村留学を核にした村づくりは、委員会で企画決定された事業計画に基づいて推進される。役員会と計画を実行する山村留学・企画・農業の3班で委員会は組織され、事業計画などを各集落の区長が集落に周知し活動が行われている。

 各班の活動内容は、▽山村留学班=山村留学の募集や体験留学の受け入れ、村教育委員会や学校との連絡調整、保護者の就業先の情報収集・提供など▽企画班=移住者と地域住民の交流に「さきばる夏祭り」の実施、山村留学生と地域の子どもたちが行う体験活動「あっぽでぃ」や、その他の住民手作りの交流イベントの企画運営など▽農業班=移住者の就業の場をつくり若い世代の定住促進につなげるため、休耕地を活用しタンカンや在来ニンニクなどの栽培、収穫期の援農ボランティアによる地域農業の再生・活性化など。

 □成果

 村教委によると、18年度までに延べ18世帯30人が山村留学生として転入し、今年度は小中合わせて、18人中9人が在籍。山村留学による保護者等が延べ21人増加し、「地域活性化につながっている」と考察する。

 山村留学生は中学3年までしか在籍しないが、卒業した留学生の何人かは奄美に戻り高校へ通学したり、地元の水産業に就職したりする人も。あるIターン者は、子どもと山村留学で移住したが、両親も後から引っ越ししてきて、両親は自身の英会話やピアノのスキルを生かして校区内の子どもたちに教えることで還元している。

 新会長の吉久さんは同村の名柄出身で07年にUターンし、阿室郵便局長を務める。Iターン者の会長が2代続いたことに、「地元から成り手が出なかったためだが、Iターン者の新しいやり方や考えなどが加わったのは良かった」と振り返る。

 吉久さんの2代前のIターン者が会長だった15年度の組織改編で、2班に農業班が加わり3班となった。農業班ができて休耕地活用につながり、平田ではサトウキビ植え付け面積が増加しているという。

 吉久さんは山村留学で学校存続という一定の成果が出ているが、定住促進によるさらなる活性化を求める。「天皇杯を受賞したが、儲かる農業としては不十分。兼業をしている人が多いためか農業班が活躍できていない。新たな農産物で起業できたら、委員会で協力したい」。

 新会長として地元から次の会長候補が出ることを期待し、「山村留学により子どもたちが住んで、学校を卒業するまで継続できるような校区にしていきたい。まずは学校存続をメインで活動していく」と吉久さんは語った。