第1回奄美世界自然遺産推進シンポ

第1回奄美世界自然遺産推進シンポ

地元関係者や高校生が登壇し、希少種保護や外来種対策など意見を交わした

「地域良くする手段の一つ」
基調講演、意見発表や交換
自然詳しい人材増やす提言も

 県大島支庁は30日、奄美市名瀬の集宴会場で「第1回奄美世界自然遺産推進シンポジウム 住民参加型の希少種保護及び外来種対策」を開いた。再推薦されて来年にも登録の判断が下される「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録だが、関心も高く会場はほぼ満席状態。専門家の基調講演や、地元の関係者や高校生が参加してパネルディスカッションで意見発表や意見交換も行われた。パネリストなどから、野外に出て自然を学ぶことや、これからの奄美をどうしていくか考えることなどの提言があった。

 開会で松本俊一支庁長があいさつ。「シンポジウムを4回予定している。シンポジウムを通して、将来の奄美を考えてもらう契機になれば」と話した。

 基調講演を、(公財)屋久島環境文化財団の小野寺浩理事長が担当。スライド資料や自然に関する映像で、奄美群島国立公園やIUCN(国際自然保護連合)の勧告事項など説明。「希少種など自然が残っているのは、奄美の自然の回復力や強靭さもあるが、先人たちが無理な開発をして来なかったから」と考察した。

 最近、奄美でも人気のホエールウォッチングにふれ、「東京起点で小笠原や沖縄に行くより移動時間がかからず、高い確率でクジラ類が見られる点が広く知られると多くの人が訪れるだろう」と話し、「世界自然遺産をうまく使って、どういうふうに地域の発展に生かしていくかが大事」と語った。

 休憩をはさみ、小野寺理事長がコーディネーターを務め、環境省沖縄奄美自然環境事務所の東岡礼治所長、奄美自然環境研究会の常田守会長、奄美市住用町市集落の山下茂一区長、市議会の安田荘平議員、大島高校生物部の富元怜司さんの5人が登壇してパネルディスッカッションした。

 希少種保護や外来種駆除などについて、「希少種を守ることが在来種の保全につながる」「盗掘防止を住民などに呼び掛けて周知する」「このようなシンポジウムに参加して、知識などを得る」などの意見がパネリストから出た。

 会場との質疑もあり、学校での環境教育の在り方に、「自然に詳しい人材を増やしていく」との回答があった。小野寺理事長は「世界自然遺産は地域からすると地域を良くする手段の一つ。どういう地域にしていくか方向性を考える必要ある」と締めくくった。

 大島高校生物部3年の中村龍喜さん(17)は「新聞部としても活動していて、生徒に自然遺産に関するアンケートも実施した。奄美群島国立公園について、文化という新しい観点を知れた。良いシンポジウムだったので、次の校内新聞の記事にして紹介したい」と振り返った。