地域消防力、モデル検証へ

大島地区消防組合消防本部などの案内で現地を調査する長谷見さん(左2人目)ら研究チーム

早大など研究チーム来島
大笠利(笠利町)集落で、現地調査や住民説明会

 総務省消防庁消防研究センターと早稲田大学の共同研究チームは10日、8月から始まる文部科学省指定の「笠利地区における火災安全対策に関する調査」に向けて来島し、奄美市笠利町の大笠利集落で研究開始のための現地調査と集落住民への調査説明会を開いた。研究は地域の防災能力を調べて検証を試みることで、日本全土や島しょ圏の防災計画に役立てようというもの。チームを率いる早稲田大学理工学術院教授で前日本火災学会会長の長谷見雄二さんは「人口減少や高齢化が進むなか、防災面では全国的なリスク増加が懸念されている。大笠利から被害を減らすモデルを発信できれば」と期待を寄せた。

 事業は、文科省科学研究費助成事業「火災の早期対応・鎮圧を目標とする火災拡大抑制対策の構築」の一環。2016年の新潟県糸魚川市で発生した大規模火災などで、住宅密集地や空き家率などの火災の危険性が浮き彫りとなる中、過疎と人口減少の時代に合わせた地域の消防力を検証し、各地で活用できる予防や活動、体制の在り方を検討するもの。

 同地区は、連携力を備える地域、昨年の大笠利火災の経験などを踏まえて文科省が推薦。今後は、住民アンケート、地理的状況や消防水利などを調査した上で、状況に照らした防災対策を検証し、地区の先進として防災計画モデルなどを探っていく。

 この日は、長谷見さんら研究生3人、同センター・鈴木恵子主幹研究官ら5人が現地を訪問。現場視察を行い、住民説明会で調査協力などを要請した。

 長谷見さんは「重要なのはいかに費用を掛けずにリスクを減らすか。まずはこの地区に合った防災システムを作ることから始めたい」と話した。

 期間は、今年8月~21年3月までを予定。研究生が2カ月に1度程度同地区を訪れ、調査・報告を交えながら検証を進める。