参院選@奄美⑤

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今年度、「奄美くろうさぎ留学」の児童1人を初めて受け入れた住用小のリュウキュウアユ観察会

小規模校の現場
児童生徒減少と複式学級

 奄美市は2018年度から奄美群島外に在住する児童、生徒を市内の小規模小中学校に受け入れる山村留学「奄美くろうさぎ留学」を実施している。昨年度は8人の児童生徒が、市内の5小中学校に1年間在籍、今年度も4小中学校に6人の児童生徒が通い、地元の子どもたちと一緒に、勉学に勤しんでいる。

 今年度、留学生1人を初めて受け入れた住用小で13日、土曜授業があり、児童らは総合学習の時間に近くの役勝川でリュウキュウアユの観察会を行った。4月に神奈川県川崎市からやってきた留学生の鈴木美花さん(10)も、友達と一緒になって水中眼鏡で川の中をのぞき込むなど楽しんでいた。「川で泳ぐのは初体験。水がとてもきれいで魚やエビなどいろんな生き物を見ることができた」と話す鈴木さんの笑顔が印象的だった。

 同校の児童数は14人。今年度、1年生の入学はなく、2学年の児童が一つの学級で学ぶ複式学級で授業を受けている。同校の久永浩幸校長は「来年は1年生が入ってくる予定。児童数が増えることで学校活動も活発になり、地域の活性化にもつながる。少人数ならではのアットホームな雰囲気など、小規模校の良さも生かしながら、山村留学してくる児童と地元の子どもたちの交流を深めていきたい」と語る。
 
 ▽受け入れ態勢

 豊かな自然環境を生かし、子どもたちを地域全体で守り育てることで、地域の活性化にもつなげることを目的とした山村留学。奄美市同様、郡内の各自治体でも様々な形で山村留学を実施しており、今年度は、小学校15校、中学校8校で行っている。背景には、過疎や少子化などによる児童生徒数の減少がある。

 市教委は、「児童生徒の減少に伴う学校の統廃合などは現状では考えていない」としているが、大島郡内にはこれまで、児童生徒の減少によって、休校、閉校となった学校もあり、存続のためにも学校は、一人でも多くの児童生徒を確保する必要がある。一方で、地域住民の高齢化などから里親のなり手の確保も課題となっている。

 徳之島町の手々小中学校では、18年度から、空き家を改修した「ふるさと留学センター」を設置するなど、独自の取り組みを実施。里親のなり手として、地域おこし協力隊員を活用、留学生の受け入れ態勢を整備した。同町は、「地域の高齢化により里親のなり手が減少、このままでは、ふるさと留学制度自体がなくなってしまうという危機感があった」という。

 ▽複式学級解消

 県教委大島教育事務所によると、奄美群島の小中学校129校(小学校84、中学校45、休校は除く)のうち、複式学級のある学校は小学校53校、中学校16校。小学校で63%、中学校で35%の学校が複式学級を導入している。奄美市教委の担当者は「児童生徒が1人増えるだけで、複式学級の解消や配置される教員の増員につながる場合もある」と話す。

 奄美市議会6月定例会で、県教職員組合奄美地区支部が提出した「教職員定数改善と義務教育費国庫負担制度2分の1復元、複式学級解消」などを求める意見書採択を要請する請願が賛成多数で可決された。請願を提出した同支部の高幸広議長(59)は「離島の学校の多くが小規模校で、複式学級となっている。単式学級で学ぶ子どもたちに比べ、教育の機会均等が保障されているとは言えない」と指摘。また、離島勤務で初めて複式学級の教鞭をとる教諭の立場についても「奄美に赴任する先生の多くが、初めて複式学級を担当することになる。2学年を同時に指導するため、教材の準備や指導などの負担も大きくなってしまう」と対策の必要性を訴える。

 今後も児童生徒数の減少が予想されるなか、学校の存続、複式学級の解消のため、各自治体は、豊かな自然や少人数ならではの行き届いた学習環境を売りに、留学生の呼び込みに力を入れていくだろう。そのためにも、地域の特性を生かした受け入れ態勢の構築などへの支援が求められる。また、子どもたちの教育環境の改善には、自治体レベルでは対応できないことも多い。国の学級編成基準を改め、学校を統廃合することなく複式学級を解消するてだても必要ではないだろうか。
     =おわり=
 (この連載は松村智行、川内博文、西田元気、徳島一蔵、赤井孝和が担当しました)