新種アマミヤツシロラン発見

新種と判明した花を咲かせず開かないまま結実する「アマミヤツシロラン」(提供写真)

新種を発見した右から山室さん、田代さん、森田さん、原さん

神戸大、末次准教授と地元の植物研究家 奄美大島と徳之島の山中で
生息地は伐採可能区域、環境悪化懸念

 神戸大学大学院理学研究科の生態・種分化分野を研究する末次健司准教授(31)は、奄美大島と徳之島の森林内で発見した、花が咲かないランが共同研究で新種と判明し、和名「アマミヤツシロラン」と名付けたことなどを学会誌に発表した。植物研究家の奄美市在住の森田秀一さん(61)などは相次ぐ新種の発見を喜び、今後も貴重な奄美の自然保護を求めた。

 末次准教授と協力し、奄美大島の光合成をやめた植物(従属栄養植物)の調査をしている奄美シダ類研究会のメンバー森田さん、山室一樹さん(58)、田代洋平さん(38)、原千代子さん(64)は今年3月、花が一度も開かず堅い蕾=つぼみ=のまま結実するオニノヤガラ属植物を奄美大島と徳之島で発見。末次准教授によると、発見された植物は同属のタブガワヤツシロランに似るものの、花が開かずに結実する点が異なるためメンバーから調査を依頼されたという。

 資料を受け取った末次准教授は、花を解剖し内部構造を調査。唇弁の形状や蕊柱=ずいちゅう=(おしべとめしべが合着した器官)の構造が違うことがわかり、新種と判断。研究成果を新種記載論文としてまとめ、国際的な植物分類学の学会誌『Phytotaxa』にて新種「アマミヤツシロラン(和名)、学名Gastrodia amamina Suetsugu」と名付けた。

 末次准教授は相次ぐ新種発見を、奄美大島の森が肉眼では見えない菌類を含めた豊かな地下生態系の広がりを示すものと位置付け、「奄美大島の森の豊かさやそこにすむ菌類の多様性を示すもの」と話した。一方で「これらの自然が多く残された場所の多くは、国立公園の第2種特別地域や公園区域外の伐採可能な地域で、間伐などで乾燥による菌類相の変化など悪影響が懸念される。未知の種が人知れず絶滅している可能性もある」と警鐘を鳴らす。

 新種発見について、「新種とは思わなかった」(森田さん)「奄美の自然のポテンシャルの高さに驚いた」(田代さん)などと喜んだ。自然保護に関して「環境省が整備するモニタリングシステムで、こうした希少種に目を向け生物多様性を保全してもらいたい」(山室さん)「伐採が可能な場所で新種が見つかっているので、第2種特別地域まで保護してもらえれば」(田代さん)などと訴えた。