絆をつなぐ、あらたな「風の電話」

東日本復興支援の一環で「赤電話」を寄贈する保さん

奄美市民が赤電話寄贈へ
東日本復興支援 「奄美との新たな縁、うれしく」

 東日本大震災でなくした人への思いを伝える「風の電話」―。電話線の無い電話機で静かに対話する遺族が後を立たないという電話ボックスが、岩手県大槌町の私設ガーデン内にある。奄美市民の一人がこのほど、復興支援の一環で使ってもらおうと所有する赤電話1台を同園に寄贈する。関係者はもう一つの電話機の誕生に、あらためての絆の大切さと人との縁の広がりを願っている。

 風の電話は、震災で多くの被害を受けた大槌町のガーデンデザイナー佐々木格=いたる=さん(74)の自宅庭でオープンした「ベルガーディア鯨山」に置かれてある。

 ボックスには黒電話1台と自由帳が1冊あるだけ。家族や友人をなくした人たちの心のより所として口コミで広がり、メディアなどで「絆をつなぐ電話」として話題に。関係者によるとこれまで延べ3万4千人が訪れた。

 元NTT名瀬支店長で同市名瀬大熊町の保宜夫さん(77)はこの取り組みを知り、保管する赤電話を提供しようと思い立った。8月下旬、佐々木さんに寄贈を申し出たところ快諾したという。

 エピソードをモチーフにした絵本『かぜのえほん』(いもとようこ著)のイラストの電話が赤色で描かれていることから、園内で子ども用「木ッ木(きっき)の森」エリアの旧ボックスに設置される見通しだ。

 佐々木さんは「(風の電話が)一つの絆をつないでおり、今回、遠く奄美との新たな縁と絆が出来たことをうれしく思います」と語った。

 赤電話の大きさは幅19㌢、奥行28㌢、高さ28㌢。重量は約8㌔。寄贈機は1971年にリニューアルされた店舗委託用タイプだ。

 保さんはこれまで復興支援プロジェクト「ストリートピアノでつなぐ~祈りのハーモニー」にも関わり、「自分にできることで、遠く被災地の早期復興につながれば」と話した。赤電話は今月中に発送する予定。