違法昆虫トラップ発見

条例指定種のアマミシカクワガタをはじめ約100匹の昆虫が違法トラップで捕獲された(標本写真:環境省奄美野生生物保護センター提供)

標本目的か大量に採取
「捕殺型、悪質な行為」
奄美大島の特別保護区で

 奄美大島の国立公園の特別保護区で、禁止されている昆虫採取目的とみられる違法なトラップが見つかっていたことが分かった。クワガタなど約100匹が、トラップの中で死んでいた。世界自然遺産登録を目指す奄美大島などでは来月5日からIUCN(国際自然保護連合)の現地調査が控えており、関係者は悪質な行為と憤りを見せる。

 環境省奄美群島国立公園管理事務所によると7月上旬、住民が奄美大島推薦地域のコアゾーンとされる特別保護地区の森の中でトラップを見つけて同事務所に連絡。同事務所の職員が警察及び自治体職員と現地を調べて、昆虫採取のためと思われる光で誘い込むタイプのトラップ10個を高さ数㍍の樹上で相次いで発見した。

 見つかったトラップは、白い滑りやすいプラスチック製の板を垂直にぶら下げ、下部には捕まえた昆虫を逃がさないための容器を配置したタイプ。中には捕まえた昆虫を弱らせるためか何らかの薬品が入っていたという。

 トラップには合計して、セミやトンボなど約100匹が入っていた。昆虫は全部死んでおり、奄美大島5市町村が2013年に制定した「希少野生動植物の保護に関する条例」で採取禁止されているアマミシカクワガタも含まれていた。指定種を捕獲殺傷した場合は同条例の罰則規定で、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。

 17年3月に国内34番目として誕生した奄美群島国立公園内では、18年2月に徳之島の特別保護地区の剥岳林道沿いの国有林内や、今年8月に第2種特別地域になっている瀬戸内町の林道で違法な昆虫トラップが設置されているのが発見されていた。

 環境省は奄美で盗掘や盗採など違法採取が絶えないことから今年3月、鹿児島市で希少な動植物の密猟・密輸対策連絡会議(事務局・同省沖縄奄美自然環境事務所)を立ち上げ。国や県、民間団体などで連携し、違法採取対策や啓発活動を行うことを協議していた。

 なお国立公園内の特別保護地区は、工作物の設置や希少種はもちろん動植物の採取が全て禁じられているエリア。今回の行為は、自然公園法違反にも該当。同事務所は今年度から、期間や回数を増やした休日や夜間の違法採取防止パトロールを民間との連携で強化。今回違法トラップが発見された箇所の見回りも増やしている。

 同事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官は、「今回のような捕殺型のトラップあまりなく二重の違反でより悪質で許されない行為。今後も関係者で一丸となって対策を強化し、密猟防止に取り組んでいきたい」と話した。

 同事務所は事態を重く見て、警察に自然公園法違反の容疑で捜査に入ってもらったとしている。