鹿大島嶼研・研究会

鹿児島会場の講演をインターネット経由で聴講する島嶼研奄美分室会場の参加者たち

多様な生態環境に適応
琉球諸島のサワガニ類など解説

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター(島嶼研)は30日夕、鹿児島市の同センターなどで第199回研究会を行った。講師から国内で24種が確認されているサワガニ類の起源や多様化、島嶼での固有化などが語られた。琉球列島の島嶼部では湿地や森林内部など、さまざまな環境に適応している例が紹介された。

 講師を琉球大学熱帯生物圏研究センターの成瀬貫=とおる=准教授が担当。演題「サワガニ類と島嶼環境」で、サワガニ類の概要と、琉球列島での分布状況などから多様な生態環境に生息している点等を講演した。

 サワガニは陸生カニに含まれ、世界では1300種ほどが知られ国内では4属24種を確認。成瀬さんは「奄美ではサカモトサワガニ・ミナミサワガニ・リュウキュウサワガニの3種がいる」とした。

 サワガニ類の起源は、白亜紀後期の化石などから約1億年前と考察。「琉球列島のサワガニ類はアマミノクロウサギなどと同じように大陸から分離されて島嶼環境で固有化した。前期更新世(およそ250万年前)に台湾系統などと分岐したとみられる」と語った。

 本州のサワガニは沢や緩やかな川の上流付近で生息しているが、「沖縄島では沢以外に水が浸み出しているような湿地、石灰岩環境にも生息している」と説明。「水の多い場所と少ない場所では、脚の形やエラの数などに違いがある」と形態的特徴も紹介した。

 会場からの質疑では「喜界島にいるサカモトサワガニは、奄美大島から海を渡った可能性はないのか」や「サワガニ類の見分け方は」などの質問があり、成瀬さんは「サワガニが海を越えたという、はっきりした証拠はない」と「甲羅に注目すると、棘があるのがアマミミナミサワガニ、ツルツルしているのがサカモトサワガニ、ザラザラしているのがリュウキュウサワガニ」と回答した。

 部活動の一環で参加した大島高校生物部1年の保岡海輝部長(16)は、OBの紹介で研究会を知ったという。「琉球列島に多様なサワガニ類がいると知らなかった。将来は生物学を研究する進路を考えているので、きょうの経験も選択肢として参考にしたい」と話した。