子ネコがアマミトゲネズミを捕食しているとみられる姿。子ネコの口元には血、足元には無残にも毛皮になったアマミトゲネズミが見てとれる(県自然保護推進員・山室一樹さん撮影)
宇検村の湯湾岳中腹で9月26日、ネコが奄美大島の固有種・アマミトゲネズミを捕食しているとみられる姿が撮影された。決定的瞬間を写真に収めた県自然保護推進員の山室一樹さんは、「夜の山中でネコを見ることはあるが、昼間に見ることはあまりない。国立公園特別保護地区の湯湾岳直下でネコが繁殖していることの決定的な証拠となる」と話している。
山室さんは同日午前9時40分ごろ、パトロール巡回していたところ、湯湾岳の宇検村にある国立公園特別保護地区と同第1種特別地域を隔てる村道沿いで、親ネコ1匹と手のひらサイズの子ネコ4匹を発見。5匹でトゲネズミを食べていたといい、写真を確認すると子ネコの顔にはトゲネズミのものと思われる血もついている。
同日午後2時半ごろ、確認のため再び同所を通行した際にも親ネコ・子ネコが5匹でトゲネズミの死骸を食べている姿があったという。山室さんは「子ネコが育つまでにどれだけの希少種が食べられてしまうのか心配。(環境省の)ノネコ捕獲に反対する人もいるが、山の中で起こっていることを知ってもらい、在来種を守るための活動だと理解してもらいたい」と語った。
山室さんからの報告を受けた奄美群島国立公園管理事務所の早瀬穂奈実国立公園管理官は、「湯湾岳周辺でのノネコの目撃情報は聞いており、マングース捕獲用のカメラに映ることもある。奄美大島の中でもコアなエリアでノネコによる希少種の捕食が日常的に起きていることがわかる写真で、早急な対策が必要。引き続き力を入れて対応したい」とした。
同事務所のまとめでは、死体からわかる範囲でネコかイヌに捕食されたトゲネズミの個体数は、奄美大島で2016年13匹、17年19匹、18年6匹。早瀬管理官によると、「現場が特定されているものだけに限られるので実際はもっと多いとみられる」とのこと。9月末には徳之島で犬に襲われたとみられるアマミノクロウサギ8匹が発見されており、早瀬管理官は「島民の方にはイヌ、ネコの適正飼養を徹底してもらいたい」と呼び掛けた。
アマミトゲネズミは奄美大島の固有種で、環境省レッドリストではⅠB類(EN)。国の天然記念物にも指定されている。近縁のオキナワトゲネズミやトクノシマトゲネズミに比べやや小型。開発や外来種による捕食で個体数が減少している。