アマミハナサキガエル

競争相手がいない徳之島で大型化しているアマミハナサキガエル(資料写真)

徳之島競争不在で大型化
研究成果発表 「進化プロセス観察でき貴重」

 東京農工大学、森林総合研究所の研究者らはこのほど、奄美群島の固有種のアマミハナサキガエルが競争相手の有無により、大きさや食性に違いがあるなどの研究成果を学会誌で発表した。研究者らは「アマミハナサキガエルは種分化の過程にあり、世界自然遺産候補地の奄美群島が、生物進化のプロセスを観察できる貴重な生態系であることを示す」と評価している。

 東京農工大の梶光一名誉教授と小峰浩隆特任助教、森林総合研究所の亘悠哉主任研究員は、この研究成果を日本動物協会の発行する『Zoological Science』(10月1日付)掲載に先立ちインターネットのWEB上で速報版を公開している。

 研究者らは奄美大島と徳之島に生息するアマミハナサキガエルについて、同じ種でもそれぞれの島の生態系に合わせて形態や生態が変化しているのでないかと予想。研究では両島の同種の体サイズ、食性、餌資源の違いを検証した。なお研究では徳之島には生息しておらず奄美大島にいるオットンガエルが競争相手と考えられることから、オットンガエルの体のサイズ、食性とも比較を実施。

 研究の結果、両島で餌となる昆虫やクモ類といった節足動物相の類似性は高いにも関わらず競争がない徳之島の同種は、競争のある奄美大島より体のサイズが大型であることが判明。徳之島の同種は▽体サイズに合わせてより大型の餌を捕食していること▽食性は奄美大島の同種より、むしろオットンガエルに近いこと―などが示されたとしている。

 こうした研究成果は、アマミハナサキガエルが競争相手のいる奄美大島、競争相手のいない徳之島というそれぞれの生態系を反映し体サイズ、食性を変化させ、新たな種に分化しつつあることを示していると指摘。今後の展開について研究者らは、「アマミハナサキガエルの行動や形態、種間関係などをより詳細に調べることで、種分化の過程にどのような現象が見られるのかを解明できる。同種が生息する地域は世界自然遺産候補地になっていて、今回の結果により、この地域が進化のプロセスを観察できる貴重な生態系であることが証明された。将来にわたる進化の可能性を保護するためにも、この地域の生態系を保全していく必要があると考えられる」とした。