台風19号被害青果物流通

名瀬中央青果で行われている葉物野菜などのセリ。九州産の入荷で現在のところ台風19号被害の影響は出ていない

九州産でカバーも懸念材料も
地元市場、葉物取り扱い「関東市場吸い上げるのでは」

 台風19号による被害は、東日本を中心に農畜産物にも及んでいる。リンゴをはじめ果実の枝枯れや落下、田畑の冠水やビニールハウスなど生産施設の損壊、牛・豚・鶏の溺死や停電による熱死など。奄美市にある地元市場、名瀬中央青果㈱(森山直樹社長)もこうした被災地から青果物を取り寄せているが、葉物野菜は九州産でカバーできるため影響は出ていない。

 同青果の取り扱い品目は、これから迎える冬場はキャベツやダイコンなど地場産の割合が増すものの、現在の時期は6対4の割合で島外産の移入品の方が上回っている。今回の被災地からの入荷は、2週間ほど前まで「高原野菜」の産地として知られる群馬県からキャベツやホウレンソウなどの葉物類が入荷していた。

 被災によりこうした東日本の産地からの全国への出荷が減少しているものの、名瀬中央青果の場合、九州産でカバー。霧島や阿蘇など高冷地で生産された葉物野菜が入荷しており、量が確保できているため、値段も安定している。また、鍋物需要があるハクサイは主に長野県から入荷していたが、これも熊本産や鹿児島産で補っている。

 一方、果物で影響が出ている。リンゴで、これは九州では生産できない。中央青果の担当者は「長野産では『シナノスイート』など消費者に人気のリンゴがあるが、入荷が難しくなるのではないか。これから青森産の出荷が始まれば、リンゴ自体は確保できる」と話す。

 九州産のカバーで葉物野菜の入荷に影響は出ていないものの、市場では仲買人などから今後への懸念も。「規模が大きい関東の市場などが品不足から九州産に目をつけ、吸い上げるのではないか。関東市場が取引に乗り出すと、こちらでは太刀打ちできない。まだ地場産が少ないだけに、九州産の入荷が滞ると品不足から価格が高騰する可能性がある」。消費者の食生活と直結するだけに、今後の状況の注視が必要となりそうだ。

 なお、東日本の産地の被害により東京の大田市場では15日、キャベツの価格が上昇した。主力の群馬産が入らず、大手青果卸での取引価格は台風前より8%高い10㌔㌘1300円程度となった。