入団時の面談厳格化を

地域防災を担う消防団員の逮捕に波紋が広がる(写真はイメージ)

島内自治体 消防団充足率76~94%
「世間の風当たり懸念」

 龍郷町内の消防団員が放火容疑で逮捕という前代未聞の事態に、奄美大島島内の消防関係者からは一様に「言葉がない」「残念としか言えない」と驚きを隠せない。県警の逮捕発表から一夜明け、消防団に対する世間の風当たりを懸念する関係者の声は少なくない。

 大島地区消防組合が拠点を置く奄美大島島内には本署(名瀬)、3分署(瀬戸内、龍郷、笠利)、3分駐署(宇検、大和、住用)があり、各地域や集落で消防団は組織される。団員は地域の防災リーダーとして火災や大規模災害発生時に現場へ駆け付け、消火・救助活動を担う。

 「地域の人間が、地域に被害を与えることが信じられない」「(消防団活動は)先輩から受け継いだ誇りある活動と思っている。(逮捕で)周囲の見る目が厳しくなるとつらい」。関係者はいずれもショックを受けており、ある団員は「手当て目当ての放火は絶対に許されない」と憤りの声を上げた。

 団員逮捕に消防団を所管する同組合担当者からは、組織内での動揺の広がりを危惧。「他地域での案件と考えず、しっかりと意識を引き締めることこそ重要。そういうきっかけとしたい」(名瀬本署)。

 今後計画する年末年始の火災予防強化期間、出初め式を前に、各部署からはパトロール体制の確認、団員の意識付けなど早急に対策する意向を示している。
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 島内各自治体の消防団員数の定数に対する充足率は76~94%。入団条件は▽地域在住者▽満18歳以上▽心身ともに健康で意欲ある者―の3項。入団希望者は面談などを経て団長が任命する。

 社会・経済情勢の変化や少子化を背景に団員数は全国的に減少傾向。高齢化が進む奄美の過疎地域では若手不在で、活動の中心が50・60代という集落も少なくない。

 ある行政関係者の一人は団員確保が年々厳しくなっている状況に理解しつつ、入団時の面談の厳格化を求めている。消火活動という責務に対し、人柄など資質を見定めるべきと指摘する。

 奄美新聞の取材では、「消防団員が、というより逮捕者本人の問題と考えたい。何らかの悩みを抱えていたのでは」などあくまで個人的な問題ととらえる声もあった。

 その一方、「地域を守りたい、力を尽くしたいという思いで活動を行っている団員ばかり。少しでもその思いに応えようと、手当て額の引き上げなど処遇改善したが…」(島内消防機関)。

 地域防災という崇高な取り組みに尽力する団員に冷や水を浴びせるような今回の逮捕。容疑者は放火の余罪もほのめかしており、捜査の進展が待たれる。