今年度の資格試験に合格、樹木医として登録された德永さん
樹木の診断および治療、後継樹の保護育成・樹木保護に関する知識の普及・指導を行う専門家である樹木医。今年度受験者の合格者が発表され、全国で新たに102人が樹木医として認定された。鹿児島県で唯一合格し、県内で23人目の登録者となったのが県農業開発総合センター大島支場長の德永太藏さん(59)。登録者が少ない貴重な資格を取得した中、德永さんは「病害虫などから樹木を守る方法等をアドバイスするなど、得られた知識を還元し地域に貢献できたら」と意欲的だ。
樹木医認定制度は林野庁の国庫補助事業として始まったが、現在は一般財団法人日本緑化センターが事業主体の民間資格。受験資格として業務経験(樹木の保護・管理、樹勢回復等に関する研究または実務従事)が通算して7年以上があり、大学や研究所の教職員・研究員、国、地方公共団体の農林・緑化関係職員、造園業従事者などが受験している。約500人が受験した今年度の合格率は20%だった。
自らのスキルや能力などに磨きをかける自己研さんを常に心掛けている德永さん。「自己研さんを表すものとして資格取得は説得力がある」として、技術士(農業部門植物保護)と植物医師(日本植物医科学協会認定)に続き、樹木医に挑戦。業務で果樹やお茶など農作物の病害虫研究・対策に関わってきたことから受験資格を満たしており、まず7月に筆記試験(論文・選択問題)を受験。合格者のみを対象とした研修は10月につくば市(茨城県)であり、2週間にわたったが、年休を取り自費で受講した。
研修内容は▽樹木の分類▽樹木の生理▽樹木・樹林の生態▽樹木の構造と機能▽樹木保護に関する制度▽土壌の診断▽病害の診断と防除▽虫害の診断と防除▽気象害の診断と対策―といった専門的なもので、「16単位の講義があり、受講後は毎日試験が続き、最終日に面接があった」と德永さん。
苦労したのが樹木識別試験だ。実際の葉を見て、その名前を判定するもの。奄美、県本土を含めても鹿児島県は樹種が限定され、落葉樹が少ない。全国の主だった樹種は東日本以北に分布するという事情がある。德永さんは県外を訪れた際、樹木園に足を運び、歩きながら樹種の葉を確認して識別に役立てたという。「図鑑と実物とでは違う。実際に葉を見て名前を覚えていった」。昨年の受験では十分に識別できず1年間保留しただけに、実物と向き合うことを重ねてクリアした。
今年12月現在の全国の樹木医登録者数は2834人(うち女性は356人)。鹿児島県の登録者は20人余りで、奄美大島には德永さん以外にもう一人登録者がいるとみられている。新たに取得した資格の活用について德永さんは「多年生植物である樹木は野菜と異なり移動できず、リセットできない。それだけに病害虫被害などから守るには診断が重要になるだけに、樹木医として得た知識を地域で生かしていきたい」と話すと同時に、「(樹木医の)後継者育成にも取り組みたい。資格取得を目指したいという人がいたら、積極的に情報提供していきたい」と語った。