田畑名誉教授出版セミナー

セミナーで著作の解説を行った鹿児島国際大学の田畑名誉教授

復帰の根っこ 「平和主義と愛郷精神」
教訓をより良い地域づくりに
執筆者11人が意見発表

 鹿児島国際大学の田畑洋一名誉教授の著作『奄美の復帰運動と保健福祉的地域再生』の出版記念セミナー(同実行委員会主催)が25日、奄美市の県立奄美図書館4階研修室で開かれた。田畑名誉教授の著作紹介や執筆陣11人による意見発表があり、奄美の復帰運動の教訓をより良い地域づくりに生かす必要性などの提言があった。

 セミナーは、「奄美群島の日本復帰運動を伝承する会」や「奄美郷土研究会」、「泉芳朗先生を偲ぶ会」などの9団体で、実行委員会(大津幸夫実行委員長)を結成して開催。司会進行は、伝承する会の花井恒三事務局長が担当した。

 開会で大津実行委員長が、「田畑名誉教授の著作はこれまでの復帰関係の出版物と違い、地元関係者など28人が加わり皆でつくったもの。格差社会の進行、地域社会の崩壊が言われているが、復帰運動の歴史を学び、得られた教訓をこうした課題解決に生かしていけるよう取り組むことが大事になる」などとあいさつした。

 続いて田畑名誉教授が、新刊の執筆の動機や読んで欲しい要点などを解説。「セミナーを復帰の日にやらせていただけるのは光栄なこと。自分は復帰当時8歳。復帰が実現した日には祝賀会があり、大人たちが8年間の米軍支配からの解放される喜びが自分にも伝わった。奄美で毎年、復帰関連の行事が続いていることに敬意を表したい。今後も引き継いでいってほしい」と話した。

 執筆動機について、「復帰運動を記憶にとどめておくためや、世界に例のない無血運動である復帰の思想を本にしたかった」と説明。「多くの人に読んでもらい、復帰の教訓をこれからの地域づくりに生かしてもらえれば。復帰には平和主義と愛郷精神が根っこにあったとみられる」と語った。

 その後、執筆者11人が登壇して意見発表。各執筆者からは復帰運動とメディアや、婦人会との関わり、軍政下の沖縄への人口移動などが紹介された。また、全島一丸となった運動が最終段階の1952年12月に政党色排除の動議を可決し、運動の中心であった復帰協議会を分裂させてしまったことへの反省と総括がなされていないという指摘もあった。