現場から  本格化にあたって

光センサー選果場利用促進へ果樹部会が、市場関係者の参加も働きかけ開いた1月22日の検討会。機能を認識してもらおうと選果機の実演もあった

高温多雨で腐敗果に注意
高まるか光センサー選果利用

2月入りを告げるように特産果樹・タンカンのはさみ入れ式が1日、奄美大島と徳之島で行われた。果樹農業の柱となる品目だが、奄美大島では未熟果である「青取りタンカン」が地元市場に出回るなど依然として適期収穫の徹底が課題となっている。出荷の本格化にあたって現状を考えてみた。

1月下旬にかけてJAあまみ大島事業本部と果樹専門部会が開いた2019年度産「奄美たんかん」出荷販売対策会議。島内市町村にある支所別に開かれたが、最もタンカン栽培が盛んで今年度共販計画でも最多(全体計画97㌧のうち4割近くの36・5㌧計画)を占める名瀬支所管内の生産者らが出席した、奄美市農業研究センターでの会議に足を運んだ。

JA側が説明したのが商品管理と販売対策。この二つに「奄美たんかん」の課題があると言っていい。収穫・出荷時期について、下場(平場)にある園地は2月15日までに、山地の上場にある園地はそれ以降が目安として挙げられた。「今期は暖冬の影響で1週間~10日ほど酸切れが早いものの、着色はまだ十分ではない。果肉もまだじょうのうが硬い。樹上完熟を基本に、果実の熟成度を確認しながら収穫してほしい」(JA)。

奄美の冬場の天候の特徴として曇天続きによる多雨があるが、今期はこれに加え1月下旬に最高気温が25度以上の夏日を連続して記録するなど冬とは思えない「高温多雨」に直面した。こうした天候下での収穫では、どのような注意が必要だろう。果樹生産農家でつくる部会代表である大海昌平さんは「果実が腐る腐敗果に注意しなければならない。収穫時にヘタが長いと他の果実に傷をつけることからヘタを短くするとともに、一定期間保管により果皮を乾燥させる予措も欠かせない」と指摘する。

腐敗果の混入は昨年の宅配便販売でも起きている。JAによると、購入者から味に関する苦情はなかったものの、「箱入りのタンカンの中に腐敗した果実が混入していた」という苦情が寄せられたという。天候の関係で適期に収穫できないこともあるだけに、購入者の奄美産への期待に応える取り組みが必要だ。

販売対策の方は、JA共販以外にも地元市場取り扱い、大規模農家を中心に行われている直接島外などの消費者らと取引する個別販売と複数の方法があるが、その前段階を統一できるかが「奄美たんかん」の根本的な課題だ。品質(糖度・クエン酸)、外観によりランク付け(秀・優・良などに格付けし、それに応じて販売価格の差別化)し販売するが、奄振事業で整備された奄美大島選果場内にある光センサー(果玉1玉ごとに内部品質、外部の傷も瞬時に測定)を活用することで、客観的データに基づきランクに沿った品質保証が可能となる。

こうした機能を備えているだけに、奄美大島で生産される全てのタンカンが光センサー選果場を利用した上で販売されたら「ランク付け通りのタンカンであり安心、信頼できる」となる。ところが実態は異なる。特に地元市場に出荷されているタンカンの光センサー選果場利用が芳しくない。同選果場はJAが運営するだけに、JA取り扱いの共販は100%選果場利用だ。それ以外の委託(選果のみの利用)では今年度計画で84㌧を目指す。それでも合計181㌧と、収益の分岐点である取扱量(選果場利用量)250㌧には届いていない。

「光センサー選果場の利用促進を図ろうと今年度、市場関係者にも参加を呼び掛けての検討会を重ねてきた。それにより市場取引している仲買人の理解・関心が高まっている。光センサーで通したものを売りたいという声が寄せられている。品質の統一に向けて前進しているのではないか」(大海さん)。光センサー選別品を示すシールのほか、新たに「光センサー選果物取扱店」のぼり旗も配布されるが、仲買人など31人から申し込みがあるという。

統一基準に基づいて品質を保証するのは産地の責任だ。光センサー選果場を利用することでしか実現できない。島内外の消費者が楽しみにしている今期のタンカン出荷で、産地の責任が果たされるか注視したい。

(徳島一蔵)