奄美大島生物多様性地域戦略専門委

奄美大島生物多様性地域戦略改訂にあたり、自然保護・観光などのあり方を協議した専門委員会

改訂案承認、年度内策定へ
付帯意見で 住民参加・過剰利用防止も要求

 奄美大島5市町村でつくる「奄美大島生物多様性地域戦略」の改訂に向け4日、奄美市名瀬の同市役所第2委員会室で有識者からなる専門委員会(委員4人)が開かれた。国立公園登録や、世界自然遺産登録に向けた動きなど近年の動向を盛り込んだ事務局案と、委員側から提案のあった「付帯意見」も承認。付帯意見では懸念される課題についての取り組み強化が求められた。事務局によると、事務局・委員による最終的な調整を経て今年度中に策定される見通し。

 同戦略は生物多様性基本法に基づき、2015年3月に5市町村で策定。広域的な戦略策定は奄美大島が全国初。15~24年度の10カ年計画で、20年度が策定から5年目にあたることから改訂を行う。第1回専門委は昨年11月に行われ、委員らが奄美大島の観光や自然保護に向けた課題について意見を交わした。

 前回会合で出た意見を取り入れ事務局が制作した改訂案をもとに協議。案では希少野生生物の盗採等防止に向けた持ち出し対策などの監視強化や、「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」に基づいたノネコ対策、「世界自然遺産推薦地モニタリング計画」に基づく調査―など、世界自然遺産登録に向け展開されている施策について追記。「世界自然遺産推進共同体」の発足などを受け、住民・民間企業参加型の自然保護に向けた取り組みを支援することも盛り込まれた。

 改訂案の説明を受け、委員からは「実施主体が不明確」、「生物多様性の劣化をどう対策するか」、「奄美ならではのきめ細やかな自然保護が今後必要」などの意見が挙がったものの事務局案を承認した。

 今後懸念される課題については委員らが付帯意見として発議。▽固有種・希少種の保護▽観光の過剰利用防止と計画的管理▽モニタリング▽保護地域を島全体の保全▽参加型の保全と活用・環境学習―の5項目の具体的・効果的な取り組み強化を求める意見を承認した。

 小野寺浩委員長(鹿児島大学客員教授)からは戦略活用に向けた展望の提案も。「地域の一人一人の生物多様性に対する知的水準を上げる必要がある」、「戦略を拠点に自然遺産も地域振興もまとめて推進していくべき」などと語った。