雇用の現場対応に苦慮

一斉休校によって働きながら子育てをする保護者への負担が懸念される(資料写真)

政府の保護者支援 具体的内容わからず
「しっかり手当を」「戸惑いの声」
新型肺炎一斉休校

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として小中学校や高校などで実施する一斉休校に伴い、休職を余儀なくされる保護者への支援策として、政府は新たな助成金制度を創設する方針を示したが、具体的な支援内容は分かっていない。共働きや一人親世帯も多い奄美では、パート従業員など非正規労働者を抱える小売業や介護事業所、女性が多く働く医療従事者などから休校による影響を懸念する声も出ている。

 パート従業員が多く働く奄美市のスーパー「グリーンストア」では、今のところ休業を求める声は出ていないという。ただ、複数の女性従業員は小中学生などを抱えており、同ストアの里綾子取締役部長は「助成金額など具体的な支援内容が分からない状況で、仕事を休むことに戸惑っている人もいるのでは」と指摘、「今後、休業を希望する人にはしっかりと対応したい。ただ、休校措置まであと1、2日しかなく、実際に休業を選択する人は少ないのでは。企業としてもどう支援すればいいのか」と突然の休校に戸惑いを隠せない。

 訪問介護やホームヘルパーなど非正規雇用の職員が多く働く介護事業の現場からも、休校が長期化することへの懸念が上がっている。奄美大島の介護事業所や障がい者支援施設などで組織する奄美大島介護事業所協議会の盛谷一郎会長は「今のところ休職を希望する声はないが、介護業界は、正規雇用よりも非正規雇用の労働者が多く、休業補償など国がしっかりと手当てしてもらえると助かる」と国の支援策を歓迎する一方、小規模施設の多くがぎりぎりの労働力で運営している現状に触れ「1人でも職員が減るとやっていけない所もある。休校が長引けば、同僚に負担をかけられないと、無理する人も出てくるかもしれない」などと指摘、「協議会として各施設の状況を見ながら相互支援できるようにしたい」と話した。

 看護師や医療事務など女性が多い職種を抱える医療現場への影響も心配される。大島郡医師会の向井奉文会長は「具体的な影響は出ていないが、未就学児や小中学生、高校生を抱えた人たちからは『今後どうなるのか』という戸惑いの声は上がっている。病院の業務に支障が出てくる可能性もあり得る」と話す。

 また、今回の政府の対応について向井会長は「子どもから大人への感染は少なく、今のところ奄美での感染はない。地域ごとの状況に応じて判断すべきだったのでは」と、全国一律の措置に疑問を投げかける。同医師会では現在、休校による人手不足などに対する協議を行う予定はないものの、「各病院の状況によっては、対応を協議する可能性はある」と懸念を示した。