納税緩和制度知って

事業者から聞き取った声の記録を読む奄美民主商工会事務局長の岡田さん

「売り上げ半分以下」「予約キャンセル」「工期決まらない」
民商呼び掛け 中小・個人事業主の声受け

 新型コロナウイルス流行が経済に影響を及ぼす中、奄美の中小・個人事業主からも切迫した声が上がっている。個人事業主が会員の8割を占める、奄美市名瀬長浜町の奄美民主商工会(江崎貞信会長)は2月後半から会員に聞き取りを実施。黒糖産業や観光業が打撃を受けているとの声を聞き取った。同事務局長の岡田美幸さんは、「納税緩和制度などを活用して、負担を軽減することができる。知識をつけて事業と暮らしを守って」と呼び掛ける。

 「事業が軌道に乗りかけていたところにコロナで打撃、売り上げは半分以下に。どうしていいか分からない」――。
聞き取りで明らかになった黒糖製品の製造業者の声だ。全国のデパートなどの催事に商品を出荷していたが、新型コロナウイルスの影響で催事が次々に中止になり、事業に深刻な影響を受けているという。

 ほかにも、観光ガイド業では2月後半から3月の予約がすべてキャンセルになった事例もある。民宿においても、スポーツ合宿の団体客の予約がキャンセルになるなどしている。

 打撃を受けているのはこのような奄美ならではの産業ばかりではない。建築業でも、中国産の部品の製造が滞っているために工期が決まらないといったケースも出てきている。美容室や生花店でも、卒業式や謝恩会など学校行事の規模縮小により売り上げが減少している。

 全国商工団体連合会は、北海道~西日本での新型コロナウイルスの影響調査を行った。奄美民主商工会でも2月後半から現在に至るまで、奄美地区の40~50会員に聞き取り調査をしている。岡田さんによると、昨年10月の消費増税で中小・個人事業主の負担が増大していたところにコロナ流行が追い打ちをかけた形だという。厚生労働省がうたう休業補償よりも、納税の負担を軽減することが課題と話す。

 「まずは、納税緩和制度を活用してほしい」と岡田さんは訴える。納税緩和制度とは、災害や事業の著しい損失、これらに「類する事実」などの場合に納税の猶予を受けることができる制度。国税庁が3月9日、新型コロナウイルスで事業が影響を受けた場合についても、柔軟に対応するよう各税務署に指示を出した。

 大島税務署の山澤研治管理運営・徴収部門統括国税徴収官も「納税が困難と感じたら、まずは税務署に相談を」と話す。利用には税務署への申請が必要。本人や家族が感染症にり患した場合や、建物で患者が発生し、備品を破棄した場合などのケースに該当し、一定の要件を満たせば利用することができる。