奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は10日、「2020年シーズンの奄美大島周辺海域におけるザトウクジラ出現状況およびホエールウォッチング参加状況の調査結果」をまとめ発表した。20年シーズン(昨年12月11日~今年3月31日)出現頭数は、19年シーズン比32・5%増の971頭(578群)で過去最多となった。赤ちゃんクジラを連れた親子も96群出現確認し、過去最多を記録。また、ホエールウォッチング利用者数は、同協会加盟のホエールウォッチング事業者8社合計で、過去最多の3684人を記録した。
「環境省19年度奄美群島国立公園奄美大島周辺海域における鯨類調査等業務の一環」で実施。同省によると、6年目の調査。
同協会は「本格的に船上調査が始まったのは14年シーズンから。また、定量的な調査ではないため単純比較はできないが、近年、ウオッチング船の増加による目撃数の増加を考慮しても、来遊頭数自体は増加傾向であると考えられる。今シーズンの初出現は昨年12月11日で、今年1月の出現数は例年より少なく、1月下旬から出現数が多くなり、来遊のピークは2月下旬であった。1月と2月は南下群が多く、3月は北上群が多く見られた」としている。
ザトウクジラ群構成については▽578群971頭の出現頭数から1群の平均頭数は1・68頭▽MC(母仔連れ)とMCE(母仔連れと雄個体)は、合わせて96群出現し、16・7%を占め、過去最多となった(昨シーズンは52群)▽1頭群が最多で249群(43・1%)、2頭群は2番目に多く207群(35・8%)、3頭群は19群(3・3%)、4頭群は3群、5頭群は2群、6頭群と8頭群がそれぞれ1群見られた―との調査結果を示した。
ホエールウォッチング利用者数は▽事業者8社合計で過去最多の3684人。19年シーズンの1・26倍▽3684人のうち、1526人(41・4%)は、ホエールスイム(シュノーケリングで海面から観察)利用者が占め、ホエールスイムの人気の高さがうかがえる結果となった▽新型コロナウイルス感染症対策のための外出自粛等によるキャンセルが355人あった―としている。
同協会は①日別の出現頭数グラフ(20年シーズン)②出現経路図(同)③ホエールウォッチング利用者数グラフ(12~20年)―もまとめている。
興会長は「奄美大島海域の特徴は、(ザトウクジラが繁殖海域を行き来する)通りルートで移動個体が多いこと。穏やかな大島海峡の入り江は子育てに適しており、今後の調査が楽しみ」「奄美大島の利点は山が高く、(北寄りの風などが強い)冬場は、島陰になる小湊方面で観察できる点だ」「クジラへのストレスをなくしていけば、慣れてきて近くで観察できるようになる。協会の総会でも『(ホエールウォッチング利用者が)のんびりと見れるように努めていこう』と話し合った」などと述べた。