希少種自生地で草刈り

自治体発注の草刈りによりアマミナツトウダイが伐採された箇所


開花の様子(昨年3月中旬、西康範さん撮影)

一部伐採、事前確認徹底へ アマミナツトウダイ

 奄美大島北部の海岸沿い峠道には、固有種で絶滅危惧種のアマミナツトウダイの自生地がある。4~5月が開花期だが、開花を前に道路を管理する自治体発注の草刈りが行われた。一部の伐採が確認されたことから、自治体では事前に自生状況の確認を改めて周知していく方針だ。

 自治体関係者によると、草刈りが行われたのは先月。職員が現地を訪れたところ、3~4人による作業の最中で「アマミナツトウダイの自生を把握している作業員がたまたま不在で連絡が徹底せず、誤って刈ってしまったようだ」と話す。

 植物に詳しい専門家と職員が確認したところ、自生していた十数株のうち、全て伐採されたのではなく、8株程は残っているという。まだ葉が細長い新しい株も確認されている。自治体関係者は「自然に詳しい職員も配置されている。道路の管理作業として草刈りを行う場合は、希少種の伐採を繰り返すことがないよう事前確認、作業員への周知を徹底していきたい」としている。

 アマミナツトウダイは、環境省のレッドリストでは絶滅の危険が極めて高い絶滅危惧ⅠA類に分類され、島内5市町村は希少野生動植物の保護条例で採取を禁止している。自然観察の指導などを担当している職員は「草刈りによる伐採を防ぐためマーキング(標識)する方法があるが、自生場所が知られることで盗採につながる可能性があり対応が難しい」と話す。

 今回の事態について自然への関心が高い住民(65)は「この道路は希少種の宝庫で、アマミナツトウダイのほか、リュウキュウスズカケ、コナミキなどが自生している。世界自然遺産に登録された島で、希少種の盗採や道路維持管理のための伐採が繰り返されている。行政だけでなく、われわれ住民が認識を新たにし、自然を見守っていく姿勢を持つべきではないか」と指摘する。

 アマミナツトウダイは林縁や道端に生えるトウダイグサ科の多年草。草丈は40~60㌢。葉は三角状の卵型で、葉先は丸い。この葉の上で黄色の花が咲く。