作業小屋で農業の楽しさを話す増田さん
「老人よ大志を抱け!」の大看板が出迎える
育苗ポットが並ぶ増田さんの畑
「奄美市知名瀬の荒地開発プロジェクト」と銘打って、約一町歩(1㌶)の畑で無農薬と化学肥料を使わない農業を展開する「ゆずり葉の郷」農業指導員の増田雅文さん(72)。同施設の障がい者たちと一緒に農作業を行い、作業日誌や、農業ノートの記入指導も。今年から行う予定だった「親子野菜教室」は新型コロナウイルス感染拡大のため、来年から実施に。「親子で農作業することで、非行もなくなる」と話す増田さんの畑の前。「老人よ大志を抱け!」の大看板が表れる。
知名瀬の金作原に続く耕地。かつては荒地だった。この場所を引き受け、恵原義盛さんんの綴った『奄美生活誌』(南方新社刊)を奄美農業歳時記として愛読。毎日の日の出、日の入り、気温、地温(土の温度を計る温度計)を記入し、一年間の科学的データ作りに余念がない。独自に島の「農事暦」を作成中。
「私のモットーは、やって楽しく儲かる農業」と誰にはばかることなく笑いながら話す増田さんは屈託がない。赤土の畑には黒い育苗ポットが並び、タマネギ、レタス、キャベツ、ナス、トマトなどの苗が並ぶ。畑の手前では障がい者たちが増田さん手作りの籾殻を墨にした「くんたん」をスコップですくい育苗ポットに詰める作業を手伝っている。「くんたん」は虫がつきにくいとのこと。1ポット50円で売り出している。
増田さんは、かつては鹿児島県内8カ所の農協で指導員として働き、40年前に当時の名瀬農協に赴任。三方村(芦花部・有屋、小湊、名瀬勝、小宿)の水田20町歩を田植え機5台で回る作戦を考えたり、タンカンの出荷に一役買っている。
また、鹿児島県の産地ブランド誕生に寄与。開聞町ではビワ、頴娃町ニンジン、入来町キンカン、財部町ゴマなど儲かる農作物を生み出し、『野菜2期作の時代 どん底からの挑戦』(南日本新聞開発センター刊)のタイトルで野菜2期作研究指導運動家として書籍も著している。
昨年の9月から奄美に移住。農作業を始めたが、いきなり出迎えてくれたのはハブだった。怖かった。でも、「これでは奄美で過ごせない」と草刈り機でグチャグチャにした。
「島は暖かいから野菜も二期作できる。もっと作れる。すごい場所。島のみんなと一緒に農業をしていきたい。72歳はまだ若いよ。私のような老人と一緒に農業を楽しもう」と底抜けの明るさで笑った。
(永ニ優子)