世界自然遺産登録候補地として、昨年10月、IUCNの担当者が奄美大島島内を現地視察した(写真は湯湾岳登山口での視察)
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が今年6月に予定していた世界遺産委員会を開催延期にしたことで、奄美・沖縄地域の世界自然遺産登録の今夏実現が見通せなくなった。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受けた異例の決定に、奄美群島の各団体からは「残念だが、仕方がない」と理解を示す声が上がった。一方、自粛要請で観光などに影響が続いており、「地域経済は厳しい状況だが、(登録に向け)これからも準備や活動を進めていくしかない」と複雑な反応も出ている。
ユネスコの諮問機関「国際自然保護連合」(IUCN)が2年前、世界自然遺産登録の延期を勧告。政府の再推薦を経て今夏実現を目指していたが、新型コロナの感染拡大から審査会議を延期するニュースが駆け巡った15日、奄美の関係機関の反応は様々だ。
登録実現を期待していた奄美大島観光協会の越間得晴会長は「状況が落ち着かないと奄美の観光も活性化しない。観光業は自粛要請ムードで厳しいが、登録に向け今後も関係団体と準備を進めていくだけ」と気持ちをあらたにしている。
奄美大島商工会議所の有村修一会頭は「新型コロナ感染が拡大している現状では致し方ない」とユネスコの判断に理解を示した上で、「不要不急の外出自粛が続く中、経済的な波及効果は限定的なものと推察。前向きに受け止めながら、行政や関係団体と連携して登録実現に努めたい」とコメントした。
「世界各地でコロナの影響が広がっている状況では仕方がない。早期終息が見通せないので、審査会議が開けないことは想定できた」。自然保護に取り組む団体からは、今後も従来の活動に変わりないことを強調する意見が相次いだ。
NPO法人徳之島虹の会の美延睦美事務局長は「これまでも豊かな自然や文化、歴史を守り続けてきた。登録実現の可否に関わらず、活動を進める」。奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長は「奄美の自然に魅せられた人は多く訪れており、ガイドの質を高めるなど受け入れ態勢を整えたい」とそれぞれの立場を示した。
奄美大島自然保護協議会のパトロール員・山下弘さんは「実現スケジュールが見通せなくなったことは残念ではあるが、時間的猶予を設けてもらったと理解し、奄美の自然環境の保全と啓発活動につとめる」と話した。