抜き取られ放棄されたカクチョウラン(提供写真)
開花しているカクチョウラン(西康範さん撮影)=資料写真
宇検村の林道沿いで2日午前、カクチョウランの盗掘被害が発見された。開花時期の盗掘が多く、数が減少している。
カクチョウランは「鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例」による「指定希少野生動植物」に指定されている。同条例に違反すると罰則(最高で1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)がある。環境省が分類する絶滅危惧Ⅱ類(VU)でもある。
山下弘さん著『奄美の絶滅危惧植物』によると、カクチョウランはやや明るい山地林縁に生える大型の地生ラン。長さ60~120㌢の茎の先に白・赤褐色・紅紫色の花をつける。山下さんによると、高値で取引されるランではないが、大型で目立つ姿のため狙われやすいという。
盗掘被害のあった場所はカクチョウランの群落地として知られており、区画にはテープが張られ保護されていた。奄美野生生物保護センターによると、地域の草刈りの際にも誤って刈り取られることがないよう周知されていたという。
2日午前、林野庁名瀬森林事務所の茂野潤首席森林官が巡視中にカクチョウランが抜き取られているのを発見し、同センターと宇検村に通報した。同日午後、奄美大島自然保護協議会の宇検村役場企画観光課・藤貴文課長補佐が現場を確認した。
今回は10本程度が抜き取られ、そのうちの数株が持ち去られたとみられている。
藤課長補佐は「カクチョウランの群生を守ってきた場所でこのようなことが起こり、大変残念。今後このようなことが起こらないよう、パトロールやカメラでの監視など保護対策を強化していきたい」と無念をにじませた。
奄美野生生物保護センターの千葉康人国立公園管理官は「またもこのような違法行為が発生してしまい、大変残念。奄美の宝である野生生物を守るために今後も関係機関と連携して監視の強化を図っていきたい」と決意を新たにした。