「デジタル・ネイティブ世代」という言葉がある。IT技術に子どもの頃から当たり前に触れている若者世代のことだ。奄美市名瀬の奄美情報処理専門学校(福山洋志学校長)で学ぶ学生らはまさにそうだ。加えて、彼らは新型コロナウイルス流行によって、リモート就活やテレワークが当たり前の「テレワーク・ネイティブ世代」になりつつある。5月下旬からリモート就活を控える2年生らに話を聞いた。
川畑さんは高校卒業後、大学に進学したが、プログラミングに興味を持って進路を変更、同校に入学した。卒業後は島内の企業でWEBサイト構築に関わる仕事をしたいと考えている。島内での就活とはいえ、志望企業の本社は本土にある。本土の人事担当者とのリモート面接に向けて「画面の向こうの相手にどう見られるか考えて対策をしていきたい」と話す。
4月~5月上旬にかけてはオンライン授業を受講した。「龍郷町在住なので、通学のストレスが減った。遠隔授業の強みを感じた」という。今後の課題はWEBサイトを作る上でのデザインセンスを磨くこと。同校の授業を活用してデザインの知識を強化する。
チャンさんとホァンさんはベトナム出身。日本語の勉強をしたい気持ちに加え、「奄美が好き」(チャンさん)、「専門知識を学びたい」(ホァンさん)との理由から同校に入学した。
チャンさんは日本かベトナムで就職を希望。IT企業に加え、翻訳の仕事にも興味を持っているという。「日本語でのリモート面接が課題」と笑う。
ホァンさんは島内の飲食店でアルバイトをした経験から、飲食業に興味を持っている。日本の飲食店に就職するには「特定技能」の在留資格を取得する必要があり、そのための筆記試験対策に追われる。同校のカリキュラムに加えて、アルバイトと試験勉強の3足のわらじを履く忙しい毎日だ。
明るい笑顔の2人だが、コロナ不況によって留学生の就活事情は厳しくなっている。学生ビザから就労ビザへの切り替え手続きがあることに加え、多くの留学生はアルバイトで学費を賄う。しかしコロナの影響でアルバイト先が休業となり、収入が減少している。同校は学費の納入を猶予するなどして対応している。
2019年度に卒業した留学生の1人は 日本での就職を前に母国への一時帰国を控えていた。しかし渡航制限で帰国もままならず、特例措置でビザを延長して日本に滞在しているという。同校教務部の田中豪教諭は「特例措置は期間限定。渡航制限がこのまま続いたらどうなるか。コロナ不況は留学生にとって大ピンチ」と話す。
重さんは高校時代に同校でインターンシップをした縁で入学した。卒業後は東京でプログラマーとしてシステム開発に携わることを目指す。
今年の就活は企業説明会から面接までほとんどのプロセスがリモートで行われるため「初めて経験する状況。分からないことが多い」と話す。一方で「IT技術を学んだことで、オンライン授業もスムーズに受けることができた。卒業した先輩たちはテレワークをしている。自分たちもテレワークが当たり前になるかもしれない。その練習として、いい経験を積むことができた」と同校の強みを話した。
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例年、同校には6~7社から学生へのスカウト求人が寄せられるが、今年は2~3社ほど。求人の減少に加え、リモート面接で機材トラブルが起こらないかなど、田中教諭は神経を尖らせる。
16人の2年生に、リモート就活への不安があるか尋ねたところ、10人ほどが手を挙げた。画面越しのコミュニケーションに不安を感じているという。それでも、学生らの中から「やるべきことをやるだけ。自分を貫く」と強気の声が挙がると、明るい笑い声が巻き起こった。