アマミノクロウサギ
ウサギの間で流行し、致死率90%のウサギウイルス性出血病2型(兎出血病、RHDV2)が国内でも発生している。同型ウイルスを広げないために、野生のウサギを見ても近づかないといった対策が求められる。
同型ウイルスは5月に米国で大流行し、飼いウサギなど数千匹が死亡した。これを受け、動物愛護を行う東京都の市民グループPEACE(東さちこ代表)が各地の家畜保健衛生所などに電話調査を行った。その結果、日本においても、2019年5月から2020年7月までの期間に数十匹が同型ウイルスによって死亡していることが明らかになった。
同型の日本での最初の発生は、2019年5月に愛媛県の動物園で、ふれあいコーナーで飼育していた11匹の死亡事例だった。その後茨城県、栃木県などの施設で散発的に死亡事例があった。2020年7月には、岩手県の動物園でキュウシュウノウサギ・トウホクノウサギ計8匹が死亡。うち5匹が同型ウイルスによる死亡と判明した。
同型ウイルスはアナウサギ、ノウサギ、ワタオウサギなど様々なウサギに感染する。アマミノクロウサギもアナウサギ・ワタオウサギに近い種であることから、感染の可能性がある。しかし、奄美いんまや動物病院の伊藤圭子獣医師は、「ただちにペットのウサギやアマミノクロウサギに流行するとは言えない」と指摘する。アマミノクロウサギを見ても近づいたり触れたりしないといった適切な距離感と衛生観念があれば、蔓延=まんえん=の危険はないという。
同型ウイルスはカリシウイルスに属し、エンベロープを持っていないため、アルコール消毒は有効ではない。農研機構動物衛生部門によると、▽塩素剤▽ヨウ素剤▽過酢酸▽グルタルアルデヒド▽強酸▽強アルカリーが有効であるという。
大和村の環境省奄美野生生物保護センターによると、同省は同型ウイルスについて情報収集を続けており、引き続き状況を注視していきたい考え。同センターの早瀬穂奈美国立公園管理官は「ウサギウイルス性出血病に限らず、感染症は奄美群島のように生息地が限られた動物たちにとって脅威となり得る。ペットは家の中で飼う、野生動物にむやみに触らないといった基本的な感染症対策をお願いしたい」と呼び掛けた。