朝山市長から委嘱状を受け取る永田墓地利用計画審議委員
無縁墓地などが増え、再整備の必要性が高まっている永田墓地
奄美市名瀬永田・井根町の市有墓地「永田墓地」の管理や墓地利用の在り方などを協議する「永田墓地利用計画審議委員会」の初会合が11日、市役所であった。朝山毅市長が、町内会や女性団体、青年団などの市民代表のほか、葬儀関連団体、市議ら計10人の委員に委嘱状を交付。今年度中に墓地の利用計画を策定し、来年度から貸し出し可能な81区画について、市民に貸し出しを開始する方針が示された。
委員会では、市環境対策課が、2021年度から10年間の利用計画案を提示、委員らの意見を集約した。今後3~5回程度、委員会を開き計画案に対する委員会の方針を市長に報告。来年2月にも利用計画を策定する。
同課が示した利用計画案によると、立地条件などから市有墓地(1991区画)をA~Cの3区画にランク分け。市道に近く利便性の高いAランクに仕分けされた区画について、来年度から貸し出しを開始する方針。貸し出されるのは、Aランク(784区画)のうち、既に空き区画となっている33区画(146・20平方㍍)と、墓石などの撤去後貸し出しが可能な8区画(44・39平方㍍)、今後10年間で返還が予想される40区画の計81区画。貸し出す際は、永代使用料を取ることにし、金額については市内の民間墓地の取引価格と同程度の価格設定とし、民業圧迫を避けることにしている。
Bランク(1006区画)は通路が狭く、危険箇所が多いことから貸し出しは行わず、危険箇所などの解消と更地化を優先。Cランク(201区画)については、市道より遠く高低差もあり墓参りは困難と判断、返還更地化を進めることにしている。
市環境対策課によると、永田墓地には現在市民らが利用している新墓地とは別に、薩摩藩統治時代の役人らを埋葬している旧墓地もある。委員会では市教委文化財課の調査などから、文化財としての価値が高いことなどから現状保存する方針が示された。
新墓地については、これまでの同課の調査で、1991区画のうち、1210カ所が利用されており、返還済みが234カ所、返還届けはされているものの墓石未撤去が71カ所、無縁墓214カ所、通路82カ所、調査中が180カ所となっている。
市環境対策課によると、永田墓地では1982年以降、墓地台帳が更新されていなかったことから、代替わりや縁故者の島外移住などによって利用者が分からなくなるケースが増加。利用者が不明な墓には、登録申請を呼びかける立て札を設置、5年間届け出がなかった墓は「無縁墳墓」として官報に掲載。さらに4年以内に申し出がなかった場合「無縁改葬公告済」の区画として処理するなど墓地台帳の整理を進めてきた。
一方で、人口減少や民間による墓地造成などによって新たな墓が整備されたこともあり、市に墓地返還届けを提出する人も増えてきたという。これまでに返還届けが出されたケースは約300件にのぼり、実際に墓参りがされているのは、全体の7割ほどとなっている。
こうしたことから市は、永田墓地全体としての適正利用を図る必要があるとし、2012年に墓地対策室を設置し、利用状況の把握や継承、返還手続きなどを進めてきた。今年度中に、全体的な使用状況確認のめどが立ったことから、同審議委を設置。今後は、無縁墳墓に埋葬されている遺骨の取り扱いや市営納骨堂の必要性などについても協議していく。