黒糖焼酎業界、県PR事業に期待

県の本格焼酎需要回復・消費拡大キャンペーン事業は、黒糖焼酎浸透が課題となっている未開拓地域での重点的な取り組みが期待されている

東北など未開拓地支援を

 2019酒造年度(19年7月~20年6月)の県産本格焼酎の需給状況が発表され、出荷量は7年連続で前年を下回り、02年度以来17年ぶりに10万㌔㍑を割り込んだことが明らかになった。新型コロナウイルス感染症により首都圏を中心とした業務用の落ち込みが影響している中、県は支援事業に乗り出す。奄美の黒糖焼酎業界からは、支援の在り方として黒糖焼酎があまり浸透していない東北など未開拓地でのPR期待が挙がっている。

 県は、14日開会する県議会9月定例会に提案する補正予算案に「鹿児島県本格焼酎需要回復・消費拡大キャンペーン事業」(8262万円)を盛り込んでいる。コロナ影響を受けている業界を支援しようと、県酒造組合などと連携して消費拡大キャンペーンを実施するもの。

 黒糖焼酎を含む本格焼酎のPRイベントはこれまで首都圏などにある百貨店等での物産展に合わせて開催され、実際に味わってもらうことで他のアルコールとの違い(香り・品質)を認識してもらおうと試飲が重視された。一般的に知られていない認知度不足を補う手段となっていたが、試飲の機会が提供できたPRイベントはコロナ禍で開催できない状況となっている。そこで今回のキャンペーンでは県産本格焼酎購入で特産品などが当たる懸賞や、新しい飲み方を提案するPR動画制作が予定されている。

 県が計画するキャンペーンについて黒糖焼酎業界からは「県外での需要を高めなければ出荷量は伸びない。国内で黒糖焼酎があまり飲まれていない(知られていない)のが北関東、東北、北海道といった地域。こうした地域は日本酒を温かくして飲む燗酒=かんざけ=(ぬる燗や熱燗)が親しまれており、黒糖焼酎も冬場はお湯割りで飲まれていることから、お湯で割って飲んだ方が健康的にも経済的にも良いことをPRできないか。飲み方の提案では、黒糖焼酎もお湯割りで楽しめることを未開拓の地でのPR方法としてお願いしたい」との要望が出ている。メーカー個々での取り組みは限界があるだけに、業界と一体となっての県の支援策が期待されそう。

 なお、県酒造組合の発表によると、県内113社の出荷量(アルコール25度換算)は前年より6・0%少ない9万5093㌔㍑。県外向けが7・2%減、県内向けが4・2%減と、県外の減少割合が上回っている。県外では特に、関東向けが11・6%減と落ち込みが目立った。巣ごもり需要で全国的に手軽さや処理のしやすさから紙パック商品が伸びているが、紙パック対応は大手業者など一部に限られ県内業者の3分の2が瓶商品のみのため、落ち込みをカバーできなかったとみられている。原料別(実数換算)では、芋6万7012㌔㍑(前年比8・1%減)、黒糖焼酎7122㌔㍑(同1・0%減)、麦1万9836㌔㍑(同0・1%減)、米984㌔㍑(同4・2%増)だった。