県議会一般質問

国が整備を進めている名瀬港本港区岸壁の改良工事。完了による定期旅客船の利用時期が明らかになった

22年春定期船利用見込む
名瀬港岸壁沖出し、搭乗橋も整備
農作物鳥獣被害 約4割イノシシ、徳之島町対策強化

 9月定例県議会は28日、引き続き一般質問があり、向井俊夫議員=自民、奄美市区=、寿肇議員=自民、大島郡区=、中村正人議員=自民、霧島市・姶良郡区=、鶴薗真佐彦議員=自民、薩摩川内市区=が登壇。向井議員が取り上げた名瀬港本港区で行われている岸壁の沖出しによる直線化整備について、県もボーディングブリッジ(搭乗橋)整備を計画しており、2022年春には定期旅客船が岸壁とボーディングブリッジを利用できる見込みとの答弁があった。

 同本港区岸壁の改良工事は国土交通省九州整備局が整備を進めているもの。岸壁2バース(220㍍)の沖出し計画があり、14年から1バースの整備が進められている。

 兒島優一土木部長は答弁で「国直轄事業により市街地側岸壁の沖出しによる直線化の整備が進められており、県においても国の事業に合わせ今年度、ボーディングブリッジの整備に着手する予定」と述べ、両整備が終了すると接岸場所が変わる鹿児島―沖縄航路のフェリーの利用可能時期は2年後になるとした。また、新たな旅客ターミナルビル整備については「市街地側と長浜地区側の両岸壁が使える中央部付近をターミルの位置とし、今後施設の規模や機能などについて港湾関係者や利用者などと協議する」と説明した。

 寿議員が取り上げた奄美世界自然遺産登録に向けての今後の流れと課題は松下正環境林務部長が答弁。今年6月に奄美・沖縄の世界自然遺産登録の可否が審議される予定だったユネスコ世界遺産委員会は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で延期されたが、「延期後の開催日程は今後ユネスコにより決定される見込み。国際自然保護連合(IUCN)の勧告は、委員会開催の6週間前に内容が明らかになる予定」と述べた。現在、奄美群島ではコロナ禍により観光客の減少が続いている中、松下部長は「自然環境の理解向上と世界自然遺産登録に向けた機運醸成を図るため、地元の自然環境や魅力を再発見するエコツアーを地域住民向けに実施する」とし、所要の経費を議会提案中の補正予算に計上しているとした。

 奄美群島の農業関係では、満薗秀彦農政部長が国営かんがい排水事業喜界島地区の新規採択に向けた取り組みを説明。喜界島の約1600㌶の農地で地下ダムを水源とする畑地かんがいによる営農が行われているが、残り約600㌶は畑地かんがい未事業化となっている。満薗部長は「農業用水の安定供給と維持管理の労力の軽減を図るため、新規地下ダム(第2地下ダム)の建設を行うとともに既存の畑かん施設の老朽化対策実施へ現在、国が全体実施設計に取り組んでおり、今後事業計画の精査を終え、土地改良法に基づく手続きを経て事業に着手する予定と聞いている」と報告した。

 鳥獣による農作物被害の状況も取り上げられた。19年度の県内被害状況は前年度比で約1億5千万円増の約5億3千万円となり、このうちイノシシによる被害が全体の約4割を占めている。特に近年、徳之島町での被害が増加しているとして満薗部長は「今年度から山際に設置している侵入防止柵の見回りや補修の取り組みを進めるとともに、猟友会とも連携して捕獲頭数の増加に取り組んでいる」と述べ、徳之島町で被害防止対策を強化しているとした。