ウイズコロナの「新型献奉」を

「与論献奉による回し飲みは絶対にしない」よう呼び掛ける与論町ホームページの新型コロナウイルス感染者情報

マイコップ方式など提案 与論郷土研・麓会長
「感染症対策施し島の宝継承」

 与論町では再び新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者集団)が発生し、7月の1回目のクラスター発生と合わせると感染者数は100人を超えている。感染拡大の原因の一つとして今回も「与論献奉=けんぽう=」によるお酒の回し飲みが指摘されており、町はホームページなどで「絶対にしないよう」呼び掛けている。クラスターの再発生に地元住民からは「もう大丈夫という油断があったのではないか。繰り返すことがないよう、今度こそ感染症対策を徹底しなければならない」との声が挙がる一方、与論献奉については「島の宝であり禁じるのは疑問。新しい生活様式に沿った『新型与論献奉』とも言える新方式を確立し、統一してはどうか」との意見がある。

 与論島の歴史や文化に詳しい与論郷土研究会会長の麓才良さん(72)。与論献奉は地元で生産されている黒糖焼酎、朱塗りの杯、お盆を準備し、まず親を決めて、親が杯に焼酎を注ぎ、自己紹介など口上後に杯を飲み干し、その後客人らに杯を渡して飲み回す。観光客など客人をもてなす際に行われているが、麓さんは「もともとは祭りやお祝い事で行われていた。まずお酒をご先祖にまつり、これを頂いてから始めるという神々しさがあった。昭和50年代に島に戻ったが、当時も農作業後、一献やろうとなった際、まずは地の神さまにお酒を捧げてから始めた」と振り返る。

 現在の与論献奉について麓さんは「ご先祖や神への感謝、畏敬の念といった意味合いが廃れ、宴を盛り上げるためにぎやかに回し飲みをするという状況になっている。回すことで座が一つになり一体感が生まれるが、同じ器で10~20人の大人数で飲むことは衛生的にどうか」と疑問を呈し、ウイズコロナ・アフターコロナに向けて「新たな与論献奉の在り方を考えていいのではないか。お酒が悪いのではなく飲み方に問題があるのであり、シマの宝である与論献奉が今後も続くよう、ニューノーマル時代にふさわしい方式を」と指摘する。

 「新型献奉」として麓さんが提案するのが、お土産にも活用できる与論献奉というネーミング付きのコップを製造・準備し、回し飲みでは現在のように一つの容器を繰り返し使うのではなく、自分専用のマイコップ(他の人が飲むことがないよう名前記入)にしてお酒を飲み口上を述べるというやり方。こうした感染症対策につながる新しい方式を確立し、それに基づいた統一したスタイルの普及を求めている。