研究報告「奄美の土着的環境教育の発見」

鹿児島大学国際島嶼教育研究センター研究会を受ける同奄美分室の職員と参加者(7日)

「自然や人とのつながり継承を」
島嶼研・研究会

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターはこのほど、第206回研究会を開いた。「奄美の土着的環境教育の発見」をテーマに、同大学准教授の小栗有子氏が講師として研究報告を行った。同センターの本会場と奄美市名瀬の同奄美分室、オンラインで各家庭に同時中継した。報告では、環境教育の研究動向を紹介し、奄美に伝承されている人と自然環境との付き合い方などを紐解いていった。

 小栗氏によると、環境教育の分野は1970年ごろに誕生し、環境問題に対して人々の行動や意識を変えた。その後知識のインプットを重要視した表層的な考えに対する批判を受け、90年代に社会経済構造を変える必要性が訴えられる。2000年以降は人間の存在の問い直しに光が当てられるなど、研究関心の主題を拡張させてきたという。

 自然環境と人の在り方を問うなかで、土地に由来する「先住民環境教育」の見直しがなされた。

 その上で奄美は琉球や薩摩の統治下にあった歴史などから、先住民文化と親和性があるといい、「先住民の環境教育」と「奄美の土着的環境教育」は英語で記すと同じだとした。

 また、奄美の高校生から90代の100人にインタビューした回答の一部も紹介。質問内容は①幼少期の自然との関り②それを誰に、どのように教わったか③青年期から成人にどのようなかかわりをしたか④島を離れた時にどのようなことを認識・決断したか。奄美の人に根付く世界観や身体的感覚、土地に根差した知識、精神世界を世代別に解説した。

 小栗氏は、この研究は発展途上であるものの「奄美の人々と自然の結びつきがダイナミックに変容している。また、そのことには必然性がある」と述べ、「自然や人とのつながりを継承していく必要がある」とした。

 本会場の参加者からは『土着的』という言葉の意味についての質問があり、小栗氏は「人と土地の結びつきを意味する」などと答え、言葉の意味に関する世代間の認識の違いがある可能性も示した。

 奄美分室の環境教育に携わる参加者からは「土着的環境教育の実践例」や「来年度の具体的な活動」を問う場面も見られた。