奄美海保 20年海難事故発生状況

10月8日、奄美市笠利町の笠利沖では接近する台風に向かって帆走のみで航海した1人乗りのヨットが乗り揚げた(資料写真)=奄美海上保安部提供写真

死者・行方不明者、大幅減
マリンレジャーも減、コロナ影響か

 奄美海上保安部は8日、2020年の奄美群島周辺海域における海難事故の発生状況(速報値)を発表した。船舶事故は前年比増減なしの10隻(うち死者・行方不明者なし)、人身事故は同8人減の11人(同6人)で、死者・行方不明者の総発生数は前年比で8人少ない6人と大幅に減少。マリンレジャーに伴う事故も11人から7人に減るなど、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う観光客入込数の激減などが影響したとみられる。

 船舶事故の発生数は10隻(前年比同)で、事故種別では「乗り揚げ」が6隻と最も多く、「衝突」と「運航不能」が各2隻だった。前年比では、「乗り揚げ」が4隻増えた以外は全ての種別で減少。前年1人あった死者・行方不明者はゼロだった。

 船舶種別では、「漁船」が6隻、「プレジャーボート等」と「貨物船」が各2隻。旅客船や作業船、タンカーが絡む事故はなかった。

 一方、人身事故者の総発生数は11人(前年19人)で、うち死者・行方不明者は前年13人から6人と激減。事故区分別では「マリンレジャーに伴う海浜事故」が前年11人から7人と4人減少。内訳では、遊泳中、釣り中、磯遊び中が各2人で、スキューバダイビング中が1人となった。

 昨年10月8日には、奄美市笠利町の笠利埼灯台付近で1人乗りのヨットが乗り揚げる事故が発生した。台風14号が接近する最中、沖永良部に向かう途中の高知沖で自船のプロペラにロープを巻き込んだ上、気象情報を収集する手段がないにも関わらず、帆走のみで無謀に航海。船長にけがはなかったが、当時北の風約23㍍、波の高さ5~6㍍の悪天候の中、同リーフに乗り揚げた後、海岸に漂着した。

 また、12月5日には龍郷町赤尾木のヴィラビーチ沖でダイバーが死亡する事故も発生した。遊泳中に事故者の姿が見えなくなったため海面に浮上したところ、うつ伏せで浮かんでいる事故者を発見。搬送先の病院で死亡が確認された。

 同部は、事故の大幅な減少を新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言や入島制限による入込数の減少が要因とみており、「今年も例年の事故状況を踏まえ、引き続きマリンレジャーに伴う事故防止活動を重点的に実施する」と話した。