継続へ連携㊦~コロナ禍の在宅介護~

ガウンなど予防具着脱の正しい方法を学ぶ場となった支援チームの研修会

不安解消へ研修開催

 「利用者の自宅を訪問しての介護、デイサービス受け入れ、予防の面では買い物支援も行っている。(利用者は)体力的に弱く感染リスクを警戒しなければならないだけに、サービスを提供する側が持ち込むことがないよう十分に注意しなければならない。そのためにも研修などを通し、しっかりと専門知識を身につけたい」

 訪問介護きずな・サービス提供責任者の村田善枝さん=看護職=は語った。利用者は80歳以上の高齢者のほか、18歳以上の障がい者もおり、自宅を訪問してのサービス提供(食事、排せつ、身体介助など)の時間帯は短くて30分、長くて2時間かかる。スーパーなどに行っての買い物支援の場合は移動する時間も必要だ。

 一人暮らし、寝たきりなどにより外出することなく自宅で過ごす利用者がほとんど。また、疾患などから利用者のなかにはマスク着用が難しい事情も抱えている。本人が外に出て接触などにより感染することはないだけに、感染リスクは「持ち込む」という形で訪問する側に存在する。一方で、本土で暮らす利用者の親族が帰省する場合もある。本土からの移動だけに、ここでは「持ち込まれる」ことを警戒しなければならないが、親族滞在間の利用はなく、訪問時に顔を合わせることはない。

 「最近では関東在住の娘が1カ月ほど実家に滞在し、父親を介護するということがあった。その間は、こちらが訪問することはない。不在時に訪問し、親族に代わって介護している」と村田さん。訪問にあたりスタッフは、検温・うがい・手指消毒・マスクや手袋、ガウン、フェイスシールドなど予防具を着用して臨む。「要介護5の寝たきりの場合、口腔ケアやたん吸引といった感染するリスクが高いケアにも取り組まなければならない。医療的知識が必要だけに、不安を抱える訪問スタッフもいる」。村田さんは現場の戸惑いを口にした。

 ■不安

 奄美大島地域介護サービス提供継続支援チームは先月(昨年12月)、訪問介護・訪問看護サービス事業所を対象に新型コロナウイルス感染症に関するアンケートを行っている。回答したのは14事業所(訪問介護11、訪問看護3)。それによると、事業所の利用者が新型コロナに感染した場合に、引き続き介護サービスの提供を継続できるかは、「できると思う」(10事業所)、「できないと思う」(2事業所)、「わからない」(同)という回答となった。

 「できないと思う」または「わからない」場合の理由では、▽訪問介護職員等の家族への感染を危惧▽訪問介護職員等の人員不足▽感染することへの訪問介護員等の強い不安―などが寄せられた。

 新型コロナへの対応に関し、どのような研修を受けたいかでは、▽迅速で正確な情報の共有▽事例をもとにした実際のケアのシミュレーション▽新型コロナに関する基本的な知識等の研修▽事業所内で実施する研修の必須内容―などのほか、支援チームへの要望や意見では▽単独事業所で対応できなくなった時の支援▽訪問先での訪問介護員等の感染予防技術の指導―などが挙がった。

 在宅訪問という介護サービス事業の最前線に立ち、接触による感染に注意しなければならない職員は、正確な情報の共有や基本的な知識・感染予防技能が習得できる場を切望していると言えるだろう。

 ■一丸で

 年末の12月19日、支援チームの第2回研修会が行われた。今回の対象者は訪問介護員、訪問看護師などで、今回も来場できなくても各事業所で受講できるようWeb会議方式が取り入れられた。講師を務めたのは医師で、奄美市住用国民健康保険診療所所長の野崎義弘さん。テーマにしたのは映像と実技による「ガウンテクニック講習」。参加者は各事業所で準備しているガウン(長袖エプロン)、マスク、手袋などを持参した上で、映像を見た後、数人でグループをつくり、野崎さんの指導による実技講習、さらに解説と続いた。

 利用者の自宅訪問がスタートラインだ。予防具をどこで着けるか、床には置かない、着ける順番、手袋とガウンは一緒に脱ぐ(ガウンは身体から離して内側から畳む)、消毒を迅速に、脱いだ後の予防具の処理方法―などを参加者は実技を通して理解した。講習・解説後の質疑応答では次々と質問が挙がり、参加者の関心の高さが伝わった。質問に答えた野崎さんは「一つ一つの動作の後に手指消毒」「予防具を持ち帰る場合は大きなナイロン袋に入れ必ず封をする」「介護度の高い利用者の口腔ケアや排せつ物の処理では手袋を着用するが、あまり手袋を過信せず、脱いだ後の手洗いを徹底する」などをアドバイスした。

 こうした専門家による研修は、介護職員も正しい医療知識や技能が身につく場となる。今後も研修を繰り返し、日々振り返っていくことで不安が解消されるだろう。支援チーム代表の長谷川大さんは「介護サービス提供者が出来ることに立ち向かうためにも研修を重ねたい。私たち支える側は一人ではない。支援チーム一丸となって取り組んでいこう」と呼びかけた。

 研修会には村田さんの姿もあった。終了後の表情は充実していた。「取り組むに当たり不安に感じることがあったが、野崎先生の話を聞けて認識が変わった。安心できるようになった。きょう得た知識や技能、情報を事業所に持ち帰り、スタッフ全員に浸透させたい」。

 利用者である高齢者のフレイル(心身の衰え)予防のためにも介護の継続が欠かせない。コロナ禍での継続の鍵を握るのが支援チームの存在だが、事業所職員の意識や理解が実行力を左右する。それを埋めていくのが研修であり、支援チームの本体である奄美大島介護事業所協議会では新年も研修を充実させていく。

(徳島一蔵)