「喜界島をもっと活気づけたい」 プロボクサー久保春平さん

「喜界島をもっと活気づけたい」 プロボクサー久保春平さん

「日本一決定戦」を前に練習に励む久保春平さん

内藤大助さんをはじめ名選手を育て、名伯楽としても知られる宮田博行会長と

2月21日の全日本新人王決勝戦へ抱負

 【東京】喜界島出身のプロボクサー・久保春平さん(23)が、昨年12月、スーパーフライ級・東日本新人王に輝いた。世界チャンピオンになって「喜界島に恩返し」を誓う試練のリングは、ゴングが鳴らされたばかり。2月21日の「2020全日本新人王決勝戦」(後楽園ホール)を前に、所属するジムを訪ねた。

 喜界島に住む家族への仕送りを目的に高卒後上京、当初は仕事に汗した。ところが「ボクシング好きの会社の先輩から薦められて、数あるジムからここを選びました。自分に合っている気がしたのです」。京成立石駅からほど近い葛飾区の宮田ジムがそこ。宮田博行会長の気さくな人柄が漂う。ボクシングはテレビで見ていた程度。「先輩に出会ってなかったら、やっていない」と振り返るが、才能は花開いていく。19歳で入門、2019年2月にプロデビューするや白星を重ね、ついに「日本一決定戦」までたどり着いた。

 迎えた第77回東日本新人王決勝戦。アンダージュニアで6冠を誇り「怪物」と称された無敗の選手に一度はダウンを奪われるものの、大逆転TKOの雄叫び、同時に頬を伝わる涙を止められなかった。戦況不利を打ち砕く渾身の右ストレートで、大会MVPのヒーローとなった。

 「(涙は)応援してくれた人たちへの感謝の思い。初めてのサウスポーでしたが、焦りもなかった。ダウンのショックもあまりなく、意外と落ち着いてました」。中高時代に野球、サッカー、陸上の短距離、さらには駅伝で養った強靭なフットワークにタフな精神力も備わっているようだ。「ジムでは会長のメニューですが、ロードワークは経験した運動を基に考えたメニューをこなしています」。新中川に浮かぶ月に、夕日で有名な故郷・荒木集落を重ねたこともあっただろう。

 メッキ工場に勤め、自転車で駆け付け、週5回、3時間ほどジムで励む。「春平は持っているものが違うが、それ以上に練習をする。ほかの練習生の見本ですね」と鈴木聡トレーナーも信頼を寄せる。「練習はきついけど、ボクシングは面白い。まずは、喜界島初の日本一に。そして世界チャンピオンになって、島を活気づけ、アピールしたい」と夢を語る。「世界チャンピオンになって、羽田から喜界島へ直行便を飛ばせるようになれ」。会長の檄が飛んだ瞬間、精悍=せいかん=な顔がほころんだ。「まだまだ全然です。理想の6%しかできていません」。遥かなる道への情熱は、確かに灯されている。

 2月21日の後楽園ホールは、コロナ禍により無観客での試合になるが「みんなの声援と、島を思いながら一歩でも進化したボクシングを見せたい」ときっぱり。

 1300㌔離れた島からやって来た青年が、拳に魂を込める下町のジム。そこは、かつて喜界島にいた彼をテレビ画面にくぎ付けにした、内藤大助さん(元WBC世界フライ級王者)が夢をつかんだ場所である。