再犯防止シンポジウム

基調講演する奄美市再犯防止推進会議の浜井浩一委員長

パネルディスカッションでは保護観察官、相談支援専門員、スクールソーシャルワーカーがそれぞれの立場で意見を交換した

奄美市 非行の更生支援、情報や課題共有
見識者ら講演やパネルディスカッション

 犯罪などの再犯防止に関わる課題について地域と考える、奄美市主催の再犯防止シンポジウム「非行から立ち直りを受け入れられる地域社会へ」が7日、同市名瀬の奄美サンプラザホテルであった。現場に携わる法学者、保護観察官、相談支援専門員など見識者の講演やパネルディスカッションを通して、少年非行の更生支援の現状について情報や課題を共有した。

 シンポジウムは、奄美市再犯防止推進会議(委員長・浜井浩一龍谷大学法学部教授)が委託を受け、2018年から取り組む法務省の「2020年度奄美市地域再犯防止推進モデル事業」の一環。保護司や協力団体、行政など関係者約50人が参加した。

 講演では、浜井委員長が「罪を犯した人を排除しない社会を目指して」をテーマに講演。「人は孤立すると非常に弱くなり犯罪に走る。立ち直りは因縁(原因と結果)の問題。縁をつなぐことが大事だ」など呼び掛けた。

 浜井委員長は、少年非行については2007年のスマートフォン登場を契機に「SNSなどネット社会でつながることで若者の非行の場は解体。非行のピークは下がっている」と強調。「貧困や孤立、経済的困難が積み重なった結果、犯罪は起きる。一定程度つながれる社会を作ることが大切だ」など訴えた。

 続くパネルディスカッションでは、県保護観察所奄美駐在官事務所・保護観察官の梁瀬次郎さん、奄美地区障がい者等基幹相談支援センターの相談支援専門員・福崎伸悟さん、市教育委員会の統括スクールソーシャルワーカー・福山八代美さんの現場に携わる3人がパネリストを務め、浜井委員長をコーディネーターに意見を交わした。

 梁瀬さんからは、罪を犯した人と地域社会の関係性について「我々は警察官や裁判官と違い立ち直る姿を見られる現場。上手くいかないこともあるが、本人らが持つ力を信じて待つことも重要」とアドバイス。福崎さんは、関係機関の連携に対し「支援する側にも不安はある。連携にこだわり過ぎると責任問題につながり、本来の支援者が支えられない」など現場に憂慮し、福山さんは「非行の子どもの背景をたどると必ず親の虐待の連鎖に行き着く。親の支援こそ大事だ」と指摘するなど、それぞれの立場から意見を述べ合った。