フェリーで血液融通を検証

喜界島への搬送に向けてタクシー運転手にATRを託す県立大島病院担当者

喜界島病院間、タクシーも協力 県合同輸血療法委
連携や搬送手順確認

 県合同輸血療法委員会は16日、フェリーを使って離島間の血液製剤搬送を検証する「喜界島血液緊急融通シミュレーション」を奄美市名瀬の県立大島病院で行った。フェリーを使った病院間の融通は、県内でも初の試み。病院、フェリー会社、タクシー事業所の3機関が協力し、本格運用に向けた連携や搬送手順を確認した。

 検証は、血液製剤在庫のない喜界島の病院に、在庫を持つ奄美大島内の病院からフェリーでの融通を試みるもの。通常、離島には県赤十字血液センターから民間航空機を使って運ばれているものの夜間などの時間外には輸送手段がなく、一刻を争う緊急時にはリスクの高い院内輸血に頼ることがあるなど、より安心できるセンターの血液が身近に求められていた。

 融通は、血液製剤を常備する県立大島病院が担い、病院から港、フェリーでの搬送は、院内の人員常駐の観点から田中タクシー㈱とマルエーフェリー㈱に協力を依頼しアウトソーシング。これまで空港再開まで15・9時間待たされていたものが、最少5・7時間で安全な血液が受け取れるようになる。

 検証では、喜界徳洲会病院から県立大島病院中央検査部に一報が入り、同院担当者らが模擬血液を4~6度に保つ血液搬送装置(ATR)に詰め込み準備。連絡を受け院内に待機するタクシー運転手が名瀬港まで車を走らせ、停泊するフェリーにATRを手渡した。

 同委世話人で同院の大木浩麻酔科部長医学博士は「離島を離島が助ける画期的な取り組み」と評価。今後は「各所がコミュニケーション強化を図りながら、徳之島への輸送やその他の機関による搬送の可能性なども探っていきたい」と話した。

 事業は厚生労働省の血液製剤使用適正化方策調査研究事業を活用。今後は、マニュアルを策定した上で厚生労働省に報告し、融通要請があれば随時運用していく。