「奄美大島の内湾」テーマにオンラインシンポ

オンラインシンポジウムで講演をする藤井琢磨特任助教=島嶼研奄美分室=

「多面的価値」理解が発展へ 鹿大島嶼研

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターは13日、「奄美大島の内湾―濁りに隠れた生き物たちの楽園―」をテーマに、インターネットのWeb会議ツールZoom(ズーム)を使ったオンラインシンポジウムを開いた。約80人が参加し、奄美大島の内湾に住む生物の多様性について理解を深めた。

 同シンポは、いまだ研究途上にある奄美大島内湾の生物の多様性を発信し、その魅力を多くの人に伝えることが目的。

 島嶼研は毎年2回、これまでの研究成果を地元の人々に還元するためにシンポを開催している。今回は新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催となった。

 同シンポでは、京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所の後藤龍太郎助教が奄美大島の干潟研究の成果を紹介。後藤氏は特に「住み込み共生」(ある生物の体の表面や巣穴などに他の生物が居候すること)を取り上げ、奄美大島の干潟で共生関係にある生き物の最新研究成果を明らかにした。

 島嶼研の藤井琢磨特任助教は、濁った海=汚い海と思われがちな内湾について、「それらの思い込みは誤解である」とし、内湾の環境に適応した生き物の存在を明らかにした。

 さらに同氏は奄美大島の内湾をいくつかのエリアに分け、エリアごとにサンゴをはじめとする生き物の生態が異なることを指摘。

 同氏によると「種の多様性が高いほど潜在的な価値も高い」という。多種多様な環境があり、生き物の種類が多ければ、それぞれの用途を水産物・観賞用・ダイビングをはじめとする観光用等とあらゆる角度から分けて考えることができる。

 同氏はそれら生物資源の「多面的価値」への理解を深めることが地域の発展につながると主張した。

 琉球大学熱帯生物圏研究センターのライマー・ジェイムス・デイヴィス准教授は著しい開発が進んだ沖縄島中城湾でのサンゴ類の調査結果を公開した。同氏によると、同湾では過去45年間に海面水温や濁度の上昇などの環境変化によってサンゴ類の「生息環境の縮小」が起こっており、生態系の構成が劇的に変化しているという。同氏は同湾の調査結果を琉球列島の内湾環境の生物多様性を維持し守っていくための、教訓にしてほしい、と語った。

 島嶼研奄美分室の高宮広土教授は「奄美の海や生き物についてあまり知らない方や、一般の方にぜひ参加して欲しい」と述べ、今後も定期的に開催されるシンポへの参加を呼び掛けた。