持続可能な観光について学んだオンラインセミナー
奄美の自然を守る会など3団体が主催するオンラインセミナーが19日にあり、世界自然遺産を目指す奄美における持続可能な観光の在り方を学んだ。国が推進するSDGs(持続可能な開発目標)にあてはまる項目に基づき、登壇者が各地域の事例を紹介。それらを踏まえて奄美で取り組むべき具体的な方法を考察した。
同セミナーでは、「持続可能な観光」の概念や、各地の事例研究の紹介を、昨年10月から4回に渡り開催。最終日の同日は、3人の登壇者が各島嶼部の取り組みを紹介。その後、奄美の観光分野の研究に携わる前島了二氏(中村学園大学流通科学部)が「これからの奄美を考える」の題で講演した。
事例紹介では、各島嶼部で持続可能な観光や地域づくりの研究を行う①パラオ共和国=宮国薫子氏(琉球大学国際地域創造学部経営プログラム准教授)②久高島(沖縄県南城市)=中島泰氏(公益財団法人日本交通公社・観光研究部・地域計画室長/上席主任研究員)③白保地区(沖縄県石垣市)小林俊介氏(WWFサンゴ礁保護研究センター長)ーが登壇。
久高島の中島氏は、「持続可能」を「健康」に置き換えて、「健康な観光地」の題で講演。不健康な例として、人気観光地で受け入れ態勢を上回る観光客が訪れる現象「オーバーツーリズム」を挙げ、具体例を列挙した上で予防策を紹介した。
持続可能な観光地の四つの要因は①地域の自然・文化が守られる②経済効果がある③地域住民の暮らしが守られる④観光客の満足度が高いー「四方良し」とした。具体的には、観光客や地域住民を対象に、定期的にアンケート調査「健康診断」を行い、その結果をもとに専門家や研究者の「診察」を受ける方法を説明した。
登壇者の発表を受け、前嶋氏は、新型コロナウイルスが奄美の観光業にもたらした悪影響や良い変化を紹介。観光業の衰退の一方で、20代~30代を中心に多様な価値観・ライフスタイルの拡大が起きているとした。テレワークの定着やワーケーションへの関心の高さから、地方移住を希望する若年層が増えているという。一方で、移住せずとも奄美に関わる人員「関係人口」の拡大に力を入れる必要があると述べた。
また、観光庁が昨年6月に策定した「日本版・持続可能な観光ガイドライン」を紹介した。
質疑応答の時間には環境政策が進んでいるパラオ共和国から日本の離島が学ぶべき点を問われ「一人ひとりが自分たちの地域の強みや特徴を自負して、協力し合っているところ」などと宮国氏が回答した。
なお、実施した取り組みを国内外に積極的に発信する必要があるとの声も上がった。