奄美博物館古文書解読講座閉講式

20年度奄美博物館古文書解読講座閉講式。受講生代表に修了証書を授与

幕末の奄美、ひも解く
教材は「嶋中御取扱御一冊」

 「幕末の1853年の奄美を取り巻く情勢ひも解く。薩摩藩の大島(奄美)統治について学ぶ」―。「2020年度奄美博物館古文書解読講座閉講式」が28日、同館で行われ、今年度講座の教材として解読を進めた『嶋中御取扱御一冊』について学んだ1年間を振り返った。講師は、根気よく古文書に向き合う姿勢の大切さを指摘し、受講生27人に修了証書を授与した。

 奄美の古文書研究家・山下文武さん(故人)の著書「嘉永六年の奄美―解説『嶋中御取扱御一冊』―」によると、『嶋中御取扱御一冊』は、薩摩藩から1853年に布達されたもの。それを掟役能盛喜が安政元年に書き写したもので、藩政末期の薩摩藩の大島統治についてのきめ細かい条文が書き記されている。

 講座では、本田冨男さん、平瀬達朗さん、森紘道さんの3氏が講師を務めた。昨年5月から今年3月まで月2回計22回の講座開催を計画したが、新型コロナウイルス感染症や台風の影響で19回の講座開催となった。受講生は遠くは瀬戸内町古仁屋、奄美市笠利町宇宿から通った。

 閉講式では、平瀬講師が1年間の学事報告をした後、高梨修奄美博物館長が「古文書は地域の時代、人々の暮らしを読み取れるもの。若い人々にバトンタッチしながら奄美に残されている古文書を解読してほしい」などと述べ、期待を込めた。

 本田講師が受講生代表の長信子さんへ修了証書を手渡した。本田講師は「古文書はすぐに上達するものではなく、10年やると『伸びたな』と感じるもの。できるだけ書いてください。根気が一番に大事になる」と述べた。また、森講師は「みんなで読んでいくと分かるようになる。それが大事だと実感している」と述べた。

 受講して5年を超えるという受講生の服部香さんは「シマのことを知る喜び、学ぶ喜びを感じている。まだまだ古文書が読めるようになりたい」と感想を話した。

 古文書解読講座は、1993(平成5)年に旧名瀬市奄美博物館主催、山下文武さんを講師として開講し、28年の歴史を持つ。年度ごとにさまざまな古文書を教材として解読を進めてきた。