アマミヤマシギに小型GPSを装着し、放鳥した
スピーカー(車上)から音声を流し、反応を探る調査員
(公財)日本鳥類保護連盟(江田五月会長)はこの4月から3年間、NPO法人奄美野鳥の会(鳥飼久裕会長)と協働し、「奄美大島に生息する希少鳥類(オーストンオオアカゲラ、アマミヤマシギ)の調査・保護活動」を行う。オーストンオオアカゲラの組織的調査は初めてという。
同連盟は鳥類を始めとした野生生物の自然保護及び普及活動を行っており、同調査・保護活動は公益信託「サントリー世界愛鳥基金」から2021年度助成金300万円を得ている。
オーストンオオアカゲラは全長約28㌢、奄美大島のみに分布するキツツキの仲間で森林に生息。繁殖期にはくちばしで枯れ木などを連続的につついて音を出すドラミングという行動をする。国指定天然記念物、絶滅危惧Ⅱ類、国内希少野生動植物種に指定されているが、個体数は把握されていない。同調査・保護活動では同島約380地点での分布調査(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所とも協働)、GPSによる行動圏の把握、標識調査を行って個体数推定を行い、人工的な営巣環境の創出を図る。
アマミヤマシギは全長約35㌢、森林や農耕地に生息する夜行性の中型シギ。絶滅危惧Ⅱ類、国内希少野生動植物種に指定され、保護増殖事業の対象。奄美大島、徳之島、加計呂麻島などで繁殖が確認されているが、非繁殖期には沖縄本島でも確認されており、渡りをする習性がある可能性があるが実態はよくわかっていない。同調査では奄美大島および沖縄本島でGPSを装着し、渡りの生態を明らかにする。
17日夜、同連盟5人と同会3人が許可を得て龍郷町市理原の林道でアマミヤマシギ2羽を捕獲し、GPSを装着した。
18日は早朝から同連盟5人と同会3人が分布調査を開始した。2人1組となり、指定された地点でオーストンオオアカゲラの鳴き声やドラミングなどの音声を流し、反応を探った。奄美市住用町の市・青久・戸玉などのエリアを担当したペアはこの日12地点を調査し、6羽のオーストンオオアカゲラを確認。全体では計46地点を調査し、11羽の同種を確認した。
同調査リーダーである藤井幹同連盟調査研究室室長は「難しいことはいろいろあるが、わかっていないことばかりなので、まず土台になる資料をつくりたい。そのための第一歩としては手ごたえがあった。修正しながら全島調査を行い、個体数把握をしていきたい」と語った。同会の鳥飼久裕会長は「オーストンオオアカゲラは国指定天然記念物なのに保護増殖事業の対象ではなく、これまで個体数も生態も何もわからない状況だった。今回日本鳥類保護連盟さんが主体的に調査を行い、奄美野鳥の会も協力していくので、とても楽しみにしている」と話した。